コント「public place」作:第三字宙」 約6分(約2450文字)
登場人物:
A 公園にいる人(ツッコミ)
B 水をたくさん使う人(ボケ)
【12月・公園】
冬の公園。吐く息が白い。人物Aがベンチに腰かけ、ホットの缶コーヒーを両手で包みながら休んでいる。
A「…あー、疲れた。 」
奥の水道では人物Bが蛇口を全開にして水をごくごく飲んでいる。かなり飲んでいる。30秒くらい飲んいる。
A「…めちゃくちゃ飲むな…」
B、顔をジャブジャブ洗い、頭まで水をかけている。真冬の冷水にも関わらず、妙に気持ちよさそう。
B「あ゛〜!・・・冷てぇ・・・生きてるって感じがする・・・!」
A「12月の水道、こんな使う人、初めて見た・・・」
B「ひょお〜っ!・・・たまんねぇっ・・・!」
B、ためらいなくパンツのゴムに手をかけ始める。
A「ちょちょちょちょちょ!! ちょっと待って!!!」
B「・・・なに?」
A「なにじゃない! 公園でパンツ脱ぐな!!!」
B「やだな、パンツは洗わないよ。体を洗う」
A「それだよ! 公園で全裸はダメでしょ!」
B「水を使うのはいいんだろ?」
A「水を使うのはいいですよ、公園の蛇口だし。でも全裸はダメです!」
B「じゃあ銭湯はいいのか?」
A「銭湯はいいですよ、裸になる場所なんだから」
B「海は、川は、プールは?」
A「水着着るでしょ、全裸にならないでしょ。あなた、水と全裸がセットになってる人?」
B「お前はここで何してるんだ? 公園の何かか?」
A「ちがいます。私は、ただ、休んでるんです」
B「公園で休むのはいいのか?」
A「休むのはいいんですよ」
B「全裸で休むのは?」
A「ダメですよ!」
B「休むのがいいなら、全裸で休んでもいいだろ」
A「いや全裸はダメ! 見せちゃいけないの!」
B「見せちゃいけないものなんてない、誰しも全裸になる可能性がある」
A「同時に犯罪になる可能性もある!」
B「犯罪? それはお前の感覚の問題では?」
A「社会の常識!」
B「なぜお前に、俺の全裸を止める権利がある?」
A「・・・ある!! 公園の治安を守るためにある!!!」
B「サツか?」
A「ちがう!!」
B「じゃあ権利はない!」
A「あるんだって! ここはみんなの公園なんだよ!」
B「みんなの・・・つまり、お前のものでもある」
A「そうだよ」
B「俺のものでもある」
A「そうだよ」
B「なら、俺が裸になる自由もあるじゃないか」
A「ないよ! そこは線を引けよ!」
B「お前が公園から出ればいいだけの話だ」
A「出ないよ! こっちが普通の休憩だよ!」
B「俺にとってはここが水場なんだ。公園の水は使っていいんだろう?」
A「使ってもいいけれど、全裸は!ダメ!!」
B「服を着たまま洗えと」
A「そう」
B「お前、むちゃくちゃだな」
A「全裸の方がもっとむちゃくちゃだよ!」
B「手を洗うのはいいのか?」
A「いいですよ、問題ないです」
B「腕はどうだ?」
A「いいですよ、手、手首、腕、肘ね。どうぞ洗ってください」
B「なぜ肩がでてこない」
A「いいですよ肩を洗っても!」
B「そこまで来たら、体だっていいだろ」
A「・・・いいですよ、上半身ならね」
B「あー、わかった! お前さん、全裸がダメっていうのは、全身がダメって、そう言いたいんだな?」
A「まぁ・・・はい」
B「つまり、上半身洗って、上を着て、下半身を洗えばいいんだろう?」
A「下半身ってどこからどこまでのことですか?」
B「ここ(腰を指し)からここ(つま先を指す)までだろう?」
A「その時にパンツは?」
B「脱ぐに決まってるだろう! 当たり前じゃないか!」
A「当たり前じゃない!」
B「なんでだ、全裸じゃないだろう! さっきからダメが増えてるじゃないか!」
A「そうです、追加します。全裸と下半身露出はダメです!」
B「下半身ってどこからどこまでだ? え? どこまで良くってどこからがダメなんだ? 示してくれよ」
A「ここ(性器周辺)からここ(肛門あたり)まで・・・」
B「(食い気味に)は、いいのか?」
A「ダメです! なんでいいと思ったんだ!」
B「全裸関係ないじゃないか! ここだけじゃないか!」
A「全裸も下半身も、ここ(性器周辺)からここ(肛門あたり)まで含まれるんです!」
B「じゃじゃじゃ、パンツを履いたままならいいのか?」
A「パンツ履いて洗うんですか? 一番汚れてる場所ですよね、ちゃんと洗ってください」
B「そうしたいんだよ! こっちは! それをお前、なんだ! 洗おうってしたら、やれ、全裸はダメだ、下半身はダメだ、挙げ句の果てに、パンツ履いて洗えだ、極めつきには『一番汚れてるちゃんと洗え』っぇえ? わかってるんだよ! そこを洗いたいんだよ俺は!」
A「公・園・で・洗・う・な!って言ってるの。水汲んで、家で洗えばいいだろ!!」
B、少し考える。
B「・・・なるほど、話がわかってきた」
A「わかったか」
B「では・・・水を汲んで家で洗うことにする」
A「うん! その方がいい!」
B、水道に戻る。そして、また勢いよく水を飲み始める。ごくごくごくごく・・・。
A「・・・なにしてんの、水を汲むんじゃないの?」
B「容器がないからさ、体におさめて持ち帰る」
A「は?」
B「こうすれば漏れない。あとは家で吐き出して使う」
A「マーライオンか! 怖いよ」
B「問題ある? 水はみんなのものだろう」
A「いや、そうだけども・・・、吐いた水で体を洗うの?」
B「お前にそれを止める権利は・・・?」
A「・・・もういい・・・好きにしてください・・・」
B、水道に戻る。そして、また勢いよく水を飲み始める。ごくごくごくごく・・・。と、途中で止まり。
B「さっきはわるかったな。うっぷ」
A「・・・だいじょうぶですか?」
B「あぁ。なぁ、お願いがあるんだ」
A「わかってます。誰にも言ませんよ」
B「いや、そうじゃなくて、自分の腹容器だけじゃ足りないから、お前さんも一緒に水を飲んで運んでくれないか?」
A「・・・えぇ、もうちょっと・・・」
B「もうちょっと?」
A「・・・もうちょっと、休んでからなら」
B「ありがとう。ゆっくり休んで。水は逃げないからな」
Bは冬の公園で満足げに水を飲み続ける。Aは空を見上げる。白い息が立ち上り、遠くでクリスマスソングが聞こえる。
(了)
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このコントの創作メモ
お題「12月」
場面設定:公園
登場人物:水をたくさん使う人、公園にいる人」
下書き
場面:公園で休んでいると、水をかなり使っている人を見かけた。
状況:水をたらふくのんで、顔や頭を洗って、とうとうパンツを脱ぎ出した。
最初の変化:さすがに公園で全裸はダメだ、と止めに入る
展開:水を使うのがダメではないが、裸はダメだ。なぜか、公園はみんなの場所だから、裸は公共の場所にはそぐわない。では銭湯はいいのか。銭湯はいい。海は、川は。海や川では全裸にならないからだ。公園で休むのはいいのか。公園で休むのはいい。全裸で休むのはいいのか。全裸はダメだ。休むのはいいなら、全裸で休んでもいいのでは。全裸がなぜダメなのか。全裸は人に見せてはいけないからだ。恥かしいものではない。誰しも全裸になる可能性をはらんでいるからだ。可能性ははらんでいるけれど、犯罪になる可能性もはらんでいる。なぜ、あなたに私の全裸を止める権利があるのか。権利は・・・ある、公園の治安を守るためだ。警察か?警察ではない。では、権利はないだろう。あなたが公園から出ていけばいいのだから。公園はみんなのもの、わたしのもの、あなたのものでもある、だが、全裸はダメだ。服を着てあらえというのか。公園の水を使って、風呂がわりにしたいというのであれば、そうせざるを得ない。むちゃくちゃだあなた、服を着たまま体をあらえと?公園で全裸になることのほうがむちゃくちゃだとは思わないのか。全く思わない。あなたは公園という場所を水場として利用している、水はみんなのもので、あなたも使える、しかし、全裸になって使ってはいけない。水を汲んで家で洗えばいいのか。話がわかるようになってきたな、ほめられたことではないがそのほうが全裸よりもマシだ。わかった、では、水を汲むで持って帰ることにしよう。理解してもらえてよかった。
状況変化後:と、また水を大量に飲み始める。どうしたのだ?もともとこうやって水を汲む容器がないので体におさめている。
オチ:好きにしろ。