コント台本『忍者リモートワークするの巻』作:第三字宙

コント台本『忍者リモートワークするの巻』作:第三字宙

2025-11-07

登場人物3名、上演想定約7分(約2531文字)

登場人物:

  1. 主人(現代の富豪、武家の子孫)
  2. 服部半蔵(はっとりはんぞう・忍者の子孫)
  3. 忍者の母(忍者の母だが、普通のお母さん)

現代、主人が仕事をしている。

主人「服部、服部半蔵はいるか・・・」

返事がない。

主人「あ、そうか、リモートワークだっけ。えーと・・・(スマホを取り出して入力する)"は、つ、と、り、い、る?"」

ポンと音が鳴る。

主人「”はは、ここに”・・・か。えー、”つ、う、わ、し、て、いい?”」

ポンと音が鳴る。

主人「”御意”か。よし、」

主人、通話はじめる。SE、トゥル・・ガチャ。シルエットで服部が現れる。

服部の声「はは!」
主人「早いな」
服部の声「いついかなる時もこの忍者の末裔・服部半蔵、おそばにおります故」
主人「リモートワークじゃん」
服部の声「はは」
主人「笑ってる?」
服部の声「いえ、笑ってはおりませぬ」
主人「まぁいいや。あのね、ホラ」
服部の声「は」
主人「前にさ」
服部の声「は」
主人「私が皇居」
服部の声「は」
主人「行ったじゃない・・・話しづらい」
服部の声「は?」
主人「は、は、は、は、って相槌が多くて話しづらい」
服部の声「電波が悪く、遅延しているでござる」
主人「わかったわかった。ビデオ通話にしよ?」
服部の声「・・・」
主人「いやなの?」
服部の声「・・・いえ」
主人「いやだったらいいけど」
服部の声「いえいえいえっ! しばしお待ちいただけ、いただけるでござりつかまつろうか」
主人「いいよ、待つよ。」

と、ガサゴソと音がして、

服部の声「ねぇ、ちょっと、出てって。主とビデオ通話するから、お母さん、ちょっと聞いてる?」
主人「マイクオフにしな?」
服部の声「仕事! 仕事なの! もぉー、遊んでないってば、遊んで・・・あ、マイクオフし忘れた!」
主人「・・・大丈夫だよ、いいよ」

ビデオがオンになって、忍者が姿を現す。上半身は忍者の格好だけれど、下が短パン。

服部「お待たせいたしましたでござる」
主人「下が、間に合っていないよ」
服部「は! あいや!」
主人「いいよいいよ、大丈夫だよ」
服部「失礼つかまつり候」
主人「要件なんだけどさ」

と、忍者の母が後ろに現れる。鍋を持っている。

主人「・・・(気にしないふりをして)・・・私、この間、皇居行った時に・・・忘れ物しちゃったみたいなのよ」
服部「それはお困りでござろう」

忍者の母、後ろで夕飯の準備をしている。

主人「ほら、皇居、勝手に入れないじゃない? 確認したいんだけどさ(後ろの忍者の母の様子を見て)・・・御飯時だった?」
服部「え?(後ろ振り返って) お母さん! 今、仕事の話してるんだから、やめてよ!」
母「しょうがないでしょう? 狭いんだから」
服部「壁・・・壁側に」

と、服部PCらしきものをもって移動しようとするが、

主人「・・・」
服部「いい場所がないでござる、申し訳ないでござる」
主人「通話に戻そうか?」
服部「いえ、このまま、進めるでござる」
主人「そう? ・・・それでね、服部に皇居に忍び込んで、見てきてもらいたいんだけど」
服部「なるほど、この忍者の末裔、服部半蔵であれば、容易いこと。して、何をお忘れで?」
主人「ハンカチ」
服部「手拭いでござるか!?」
主人「うん、お気に入りのやつで」
母「お気に入りっていえば、あんた、あの毛布もう捨てなさい」
服部「まだ使えるからー!」
母「いつまでちっちゃい頃のタオルケット使って、もう、ねぇ、ほほほ、坊ちゃんお元気ですか?」
服部「入ってこないでよ!」
主人「あ、あぁ、お久しぶりだね、燕子花(かきつばた)」
母「なつかしいねぇ、クノイチだった頃を思い出すわ。旦那様にお仕えしてね、やれ潜伏だ、色仕掛けだ、大ダコの妖怪との戦闘だ、暗躍したもんだわよ、特に大ダコの触手がさ、」
服部「タコの触手の話はやめてよ! もう、わかったから、」
母「なにがわかったのあんた! クノイチの話しするとすぐにそうやって遮って! (主人に)ねぇ!」
主人「あ、ぁあ・・・そうなのか」
服部「親のクノイチ時代の話しはキツイって」
母「あのね、ぼっちゃん、もうお夕飯なんだけどね」
主人「あぁ、すまない、すぐに終わらせる」
母「・・・はーい? なにー? オムツ? お父さん、なに? オムツ変えたいの?・・・ごめんなさいね、うちの旦那が今、寝たきりなもので、失礼しますね」
主人「あぁ、うん、ごくろうさま」

と、忍者の母いなくなる。

主人「介護大変か?」
服部「はは。任務の大変さに比べれば、なんのこれしき・・・」
主人「無理するな。介護のためにリモートワークにしたんだから」
服部「かたじけないでござる・・・」
主人「しかし、忍者に頼める仕事もそうそうなくてな、こんなハンカチくらいしか」
服部「主人、お言葉ですが、そのですな、皇居の忘れ物センターに電話をすれば・・・」
主人「いや、でもほら、恥ずかしいじゃん。あんな立なところに行って、ハンカチ忘れるって」

母、戻ってきて、料理の味見をしている。

母「半蔵ー、ちょっと味見してー」
服部「今、仕事中!」
母「すぐ終わるから!」
服部「(カメラに向かって)少々お待ちを・・・」

服部、立ち上がると下半身が短パンとスリッパ姿。主人、思わず目を逸らす。

服部「(戻ってきて)塩が足りないでござった」
主人「そう」
服部「それで、皇居に忍び込むでござるな?」
主人「うん、でも、無理そうならいいよ」
服部「いや、忍者の末裔として、ここは・・・」

と、Wi-Fiが途切れて画面がフリーズ。

主人「あ、固まった」
服部の声「でござ・・・る・・・お母さん! 電子レンジ使った!?」
母の声「あら、ごめん」
服部の声「仕事中だって言ってるでしょ!」

画面が復活。

主人「戻った」
服部「申し訳ござらん。我が家のWi-Fi環境が・・・」
主人「大変だね、リモートワーク」
服部「はは・・・(今度こそ本当に笑っている)」
主人「笑ってる」
服部「いえ・・・確かに笑っているでござる」
主人「ねぇ、服部」
服部「は」
主人「もう、いいや」
服部「は?」
主人「ハンカチ、自分で電話してみるよ」
服部「しかし!」
主人「うん、服部は家族と夕飯食べて」
服部「・・・御意」

主人、通話を切ろうとする。

服部「主人!」
主人「ん?」
服部「明日は、出社するでござる」
主人「いいよ、リモートで」
服部「いえ、忍者はやはり、おそばに仕えてこそ、でござる」
主人「わかった。じゃあ、明日ね」
服部「は!」

通話が切れる。

主人「(ひとり)・・・夕飯なんだったんだろう」

暗転。
(了)

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