コント台本『いないいないバー』作:第三字宙

コント台本『いないいないバー』作:第三字宙

2025-11-20

登場人物3名、上演想定約4分(約1589文字)

登場人物:

  1. マスター
  2. 客A
  3. 客B

薄暗いバーのカウンター。マスター、客AとBがいる。

客A「すみません」

マスターが消える

客A「あれ? マスター?」
客B「ああ、このバー初めて?」
客A「ええ、まあ」
客B「ここ"いないいないバー"って言うんだよ。常連でも慣れないけどね」
客A「いないいないバー?」
客B「そう。マスターがね、いないいない・・・」
マスター「(突然カウンターの下から顔を出して)バー!」
客A「うわっ!」
客B「ほらね」
マスター「いらっしゃいませ。何にします?」
客A「え、えぇっと・・・ビールを」
マスター「かしこまりました」

マスター、カウンターの下に消える

客A「・・・あの、ビール」
客B「待って。いないいない・・・」
マスター「(また飛び出して)バー!(ビールを置く)」
客A「・・・毎回、それやるんですか?」
マスター「これが当店のスタイルですので」
客A「予測できるからいいんですけど・・・でも、本当にいなくなったらどうするんです?」
マスター「本当にいなくなる?」
客A「ええ。いない、いない・・・で、バーって出てこなかったら」
客B「うん、怖い」
マスター「怖いですか?」
客A「いなくなるのが怖いってより、どうしていなくなったのか、その理屈がわからないのが怖い」
客B「じゃあ、”バー”を変えたら?」
マスター「バーを変える? ・・・居抜きの話?」
客A「バーの居抜きは、結局、バーですよね」
客B「いないいない・・・パー!(グーチョキパーのパー)」
客A「知らないやり方のじゃんけんっぽさある」
マスター「以内以内パー!」
客A「ゴルフですか? 18番ホール全部パーで回るみたいな。セミプロ感」
マスター「お客さん、拾いますね〜」
客A「いやぁ・・・」
客B「(唐突に)いないいない・・・いるー!」
客A「ちょっと面白い」
マスター「いないいない・・・確認するまでわからないー」
客A「シュレディンガーの猫だ」
客B「いないいない・・・犬ー!」
マスター・客A「・・・」
客B「ワンワン!」
客A「犬、脱走しちゃったじゃないですか」
マスター・客B「拾いますね〜」
客A「そういうバーなんですか?」
客B「(無視して)そもそも「いない」を二回言うのはなぜなんだろう」
客A「念押し? 重要なことだから二回言う、みたいな」
マスター「いないいない・・・バーバー」
客A「床屋さんいなくなっちゃいましたね。髪伸び放題」
客B「いないババァ」
客A「介護施設でありそうな感じします」
客B「いな、いなば」
客A・マスター「?」
客B「否、稲葉。稲葉ではない、みたいな。B'zっぽいけど、B'zじゃないみたいな」
マスター「access?」
客A「世代を選ぶ!」
客B「わかる?」
マスター「え、誰?」
客B「T.M.Revolutionの朝倉大介!」
客A「ああ〜」
マスター「TMRは西川さんでしょ?」
客A「(話を切るように)ところでマスター、バーって、なんでBARっていうんです?」
マスター「ああ。(いつもの調子に戻って)いないいない・・・」
客A・客B「?」
マスター「・・・知らないー!」
客B「知らないんかい!」
客A「マスターもやるんだ」
マスター「(照れながら)たまには。(カウンターの下に消える)」
客A・客B「・・・」

沈黙。

客A「・・・いない」
客B「いない」

さらに沈黙。

客A「・・・バー?」

マスター、出てこない。

客B「・・・マスター?」

さらに長い沈黙。

客A「(不安そうに)出てくる気配もない・・・」
客B「これ、リアルに怖くない?」
客A「怖い。なんか、マジで怖い」
客B「どうしよう・・・」
マスター「(突然、店の入り口から入ってくる)すみません、ちょっとトイレ行ってました」
客A・客B「そっち!?」
客A「トイレは"いないいないバー"じゃないんですね」
客B「そこもバーで出てきてほしい!」
マスター「(カウンターに戻りながら)いやぁ、さすがに、バーって漏らしたら不衛生ですよ」
客A・客B「確かに」

(了)

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