登場人物3名、上演想定約4分(約1589文字)
- マスター
- 客A
- 客B
薄暗いバーのカウンター。マスター、客AとBがいる。
客A「すみません」
マスターが消える。
客A「あれ? マスター?」
客B「ああ、このバー初めて?」
客A「ええ、まあ」
客B「ここ"いないいないバー"って言うんだよ。常連でも慣れないけどね」
客A「いないいないバー?」
客B「そう。マスターがね、いないいない・・・」
マスター「(突然カウンターの下から顔を出して)バー!」
客A「うわっ!」
客B「ほらね」
マスター「いらっしゃいませ。何にします?」
客A「え、えぇっと・・・ビールを」
マスター「かしこまりました」
マスター、カウンターの下に消える。
客A「・・・あの、ビール」
客B「待って。いないいない・・・」
マスター「(また飛び出して)バー!(ビールを置く)」
客A「・・・毎回、それやるんですか?」
マスター「これが当店のスタイルですので」
客A「予測できるからいいんですけど・・・でも、本当にいなくなったらどうするんです?」
マスター「本当にいなくなる?」
客A「ええ。いない、いない・・・で、バーって出てこなかったら」
客B「うん、怖い」
マスター「怖いですか?」
客A「いなくなるのが怖いってより、どうしていなくなったのか、その理屈がわからないのが怖い」
客B「じゃあ、”バー”を変えたら?」
マスター「バーを変える? ・・・居抜きの話?」
客A「バーの居抜きは、結局、バーですよね」
客B「いないいない・・・パー!(グーチョキパーのパー)」
客A「知らないやり方のじゃんけんっぽさある」
マスター「以内以内パー!」
客A「ゴルフですか? 18番ホール全部パーで回るみたいな。セミプロ感」
マスター「お客さん、拾いますね〜」
客A「いやぁ・・・」
客B「(唐突に)いないいない・・・いるー!」
客A「ちょっと面白い」
マスター「いないいない・・・確認するまでわからないー」
客A「シュレディンガーの猫だ」
客B「いないいない・・・犬ー!」
マスター・客A「・・・」
客B「ワンワン!」
客A「犬、脱走しちゃったじゃないですか」
マスター・客B「拾いますね〜」
客A「そういうバーなんですか?」
客B「(無視して)そもそも「いない」を二回言うのはなぜなんだろう」
客A「念押し? 重要なことだから二回言う、みたいな」
マスター「いないいない・・・バーバー」
客A「床屋さんいなくなっちゃいましたね。髪伸び放題」
客B「いないババァ」
客A「介護施設でありそうな感じします」
客B「いな、いなば」
客A・マスター「?」
客B「否、稲葉。稲葉ではない、みたいな。B'zっぽいけど、B'zじゃないみたいな」
マスター「access?」
客A「世代を選ぶ!」
客B「わかる?」
マスター「え、誰?」
客B「T.M.Revolutionの朝倉大介!」
客A「ああ〜」
マスター「TMRは西川さんでしょ?」
客A「(話を切るように)ところでマスター、バーって、なんでBARっていうんです?」
マスター「ああ。(いつもの調子に戻って)いないいない・・・」
客A・客B「?」
マスター「・・・知らないー!」
客B「知らないんかい!」
客A「マスターもやるんだ」
マスター「(照れながら)たまには。(カウンターの下に消える)」
客A・客B「・・・」
沈黙。
客A「・・・いない」
客B「いない」
さらに沈黙。
客A「・・・バー?」
マスター、出てこない。
客B「・・・マスター?」
さらに長い沈黙。
客A「(不安そうに)出てくる気配もない・・・」
客B「これ、リアルに怖くない?」
客A「怖い。なんか、マジで怖い」
客B「どうしよう・・・」
マスター「(突然、店の入り口から入ってくる)すみません、ちょっとトイレ行ってました」
客A・客B「そっち!?」
客A「トイレは"いないいないバー"じゃないんですね」
客B「そこもバーで出てきてほしい!」
マスター「(カウンターに戻りながら)いやぁ、さすがに、バーって漏らしたら不衛生ですよ」
客A・客B「確かに」
(了)
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