登場人物3名、上演想定約6分(約2049文字)
- 牧師
- 僧侶の男性
- 娘
牧師が穏やかに、礼拝に来ている人々をもてなしている。
牧師:はい。また来週お待ちしております。はい。あ、よかったらお茶とお菓子あるんでゆっくりしてってください。はい。ま、もしお知り合いがいたら呼んできていただければ、はい。来週日曜日もやっておりますので、はい。神は教会に来る人、すべてを愛しています。
一人の男性が牧師に近づいて行く。
牧師が打って変わって怖い形相。
牧師:またお前か。
男性:ああ、お父さん。今日も素晴らしいご説法でした。「愛と許し」について、まさに諸行無常を感じましたね。
牧師:説法じゃない、説教だ。何度来ても無駄だ、お前に娘はやらん!
男性:いや、お父さん、それは何回も言ってるじゃないですか。どうして僕にはダメなんですか? 因果応報で言えば、僕は前世で何か悪いことでもしたんですか?
牧師:前世とか知らん。お前、坊主だろ。
間。
牧師:娘はクリスチャンだ。坊主のところに嫁へやる気はない。
男性:それは何度もお話してるじゃないですか。信仰は自由ですけど、ただ娘さんを僕にくださればいいんです。結婚は「縁」ですから。
牧師:何度言われてもやらん。彼女は大事にイエス様の愛に見守られて育ってきたんだ。お前が婿に来るならいいけど。
男性:僕が、そっちに入るんですか?
牧師:そうだ。
男性:いや、それは執着というものです。色即是空、空即是色。形にこだわってはいけません。むしろ娘さんが僕のところに来てもらった方が、娘さんも幸せになれると思いますけどね。
牧師:なんでだ?
男性:だって申し訳ないですが、お金に苦労されているんじゃないですか? 煩悩の一つとして、やはり経済的安定は大事ですよ。
牧師:お金じゃない。人間の幸せは愛だ。イエス様の愛があればそれだけで幸せになれる。
男性:いや、でもなぁ。娘さんがうちに来てくれた方が経済的にも安心できると思うんだけどな。現世利益も大事ですよ。
牧師:お前んとこは、そんなに金があるのか?
男性:ええ、まあ。功徳を積んだ結果ですね。
牧師:…どのぐらい儲かってんだ?
男性:まぁ、檀家がめちゃくちゃいるんで。都心に人が集まってきて、檀家さんが増えてるんですよね。葬式、法事、お盆、お彼岸と、年間スケジュールがもうパンパンで。
牧師:(少し身を乗り出して)…具体的には?
男性:年収で言うと、まあ四桁は超えてますね。万の単位で。
牧師:(咳払い)ゴホン。お前はいつも金の話ばっかりだな。
男性:すいません。神の話でなくって。
牧師:そうだ! クリスチャンは清貧潔白にならなければならない。金儲けには向いてねえんだ。
男性:そうなんですね。大変だ。まあ、お金は煩悩の最たるものですからね。
牧師:それでも真面目にやってきたんだ、今まで。
男性:ああ、それは尊いことです。(間)もしよろしければ、金銭的に援助できるんですけどどうですか? 布施の精神で。
牧師:…いくらだ?
男性:お望みならうちの収入の20%。
牧師:25%出せないか。
男性:割とがめついですね。お父さん、それ煩悩じゃないですか?
牧師:煩悩じゃない、信仰心だ。イエス様も十分の一を捧げよと言っている。なら四分の一は信仰心が厚い証拠だ。
男性:なるほど、そういう理屈ですか。25%…。苦しいですが、それで手を打ちましょう。これも修行ですね。
牧師:(少し間を置いて)やっぱり無理だ。
男性:え、なんでですか? 今握手しようと思ったのに。
牧師:彼女はクリスチャンだからだ。(考えて)貸し出すというのはどうだ?
男性:貸し出す? 娘さんをレンタルするんですか?
牧師:そうだ。心にはいつもイエス様がいる。嫁ぐことはできんでも、貸し出すことはできる。どうだ?
男性:(考えて)分かりました。お互い宗教から概念として「あの世」っていうのがありますよね。あの世に行くまでの生きてる間、人生という借り物の時間の中で一時的に預かるっていうのはどうですか? 諸行無常、すべては移ろいゆくものですから。
牧師:仏は信じないということで大丈夫か?
男性:ええ、大丈夫です。信じなくても生きていけますけどね。八百万の神みたいなもんで、イエス様も仏様の一つとして…
牧師:それは違う! では死後は返してもらうからな。
男性:うちは輪廻転生あるんで、次の人生でも面倒見ます。永遠のサブスクですね。
牧師:サブスク…
そこへ娘が登場。
娘: お父さん、またこの話してるの?
牧師:あ、ああ。お前の幸せのためだ。
娘: 私、実は仏教にもキリスト教にも興味なくて。
牧師・男性: えっ?
娘: 最近、ヨガにハマってるんだよね。無宗教のスタジオで。
牧師:なんだと!
男性:ヨガ…それはヒンドゥー教の…いや、でも現代のヨガは…
娘: あ、インストラクターの人、すごくいい人でさ。今度紹介するね。
牧師:ちょっと待て!
男性:お父さん、ここは協力しましょう。
牧師:そうだな。宗教を超えて…
娘: 私、自分で決めるから。
娘、さっさと退場。
牧師:…行ってしまった。
男性:これも縁ですね。
牧師:(肩を落として)…25%、20%でいいぞ。
男性:もう遅いです。
(了)
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