コント『おとなさんがころんだ』作:第三字宙

コント『おとなさんがころんだ』作:第三字宙

2025-10-22

コント『おとなさんがころんだ』作:第三字宙 約6分(約2300文字)

登場人物:
夫(35歳)
妻(33歳)
タカシ(30歳・夫の友人)

公園のベンチ付近。昼下がり。

タカシ「晴れてて気持ちがいいですねぇ。公園に来て良かった! (二人の間に挟まれて)あの・・・空気、重くないですか?」
妻「重くしてるのは誰かしら」
夫「タカシくん、巻き込んですまん・・・」
タカシ「いやいや・・・(間)そうだ! 気分転換に、だるまさんがころんだ!」
夫「・・・今?」
タカシ「三人いれば丁度いいし! お願いします!」
妻「(ため息)・・・好きにすれば」
タカシ「じゃあ俺が鬼! 行きますよ! (木に向かって)だーるーまーさーんーがー・・・ころんだ!」

夫と妻、離れた位置で固まる。

タカシ「おお、いい感じ! だーるーまーさーん・・・」

妻、即座にタッチ。

妻「終わり」
タカシ「はや!」
妻「もういい?」
タカシ「・・・せっかくなんで、鬼やりません?」
夫「(ぽつり)ぴったりだな」
妻「・・・何か言った?」
夫「いや・・・」
タカシ「まってまって! 楽しく! (妻に)鬼、お願いします」

妻、無言で鬼の位置へ。

妻「(早口で)だるまさんがころんだ」

タカシと夫、少ししか動けない。

妻「全然動いてない。やる気あんの?」

間。

妻「(早口で)だるまさんがころんだ」
タカシ「はやい」
夫「はやいよ」
妻「しゃべるのいいんだっけ?」

二人、黙る。妻、長い沈黙。

妻「・・・」

タカシと夫、顔を見合わせる。

妻「(だるまさんがころんだのリズムで唱和)そーとーでーうーわーきーしている」

夫、顔面蒼白。間。妻、振り返る。

妻「動けないわよね。やましいことがあると」
夫「(固まったまま)ち、違・・・」

間。

妻「(唱和)ぶかのおんなとほてる」

夫、首を振りながら走る。
妻、振り返る。夫ギリギリタッチできず。睨み合い。

タカシ「ぶかのおんなとほてるって、同じゲームであってますか?」
妻「(唱和)さわらないでけだもの」

夫、タカシに泣きそうな顔を見せながらタッチ。

タカシ「がんばった・・・」
妻「さわらないでって言ったでしょ」
夫「なんだよそれ! だるまさんがころんだじゃないじゃないか!」

妻、無言で睨む。

夫「なんか・・・言えよ・・・」

妻、無言で睨みながら動く側へ移動。

タカシ「(小声で)やるんですね・・・」
夫「この遊びの勝ち条件は?」
タカシ「・・・鬼にタッチしたらじゃないですかね?」
夫「じゃあ、今ので俺の勝ちだ!」
妻「次、私がタッチしたら私の勝ち。それで終わり」
夫・タカシ「終わり!?」
妻「ええ、次で」

夫、深呼吸。

夫「(唱和)うわきはおたがいさま」

妻、固まる。間。

タカシ「・・・え?」
夫「(笑い混じりに)ゲームって残酷だな。・・・(唱和)あいてはじむとれーなー」

妻、がっくりと膝を折る。間。

妻「・・・どこで見たの?」

夫、振り返る。

夫「タカシくん、次は君がタッチして。そうすれば痛み分けだ」
タカシ「・・・その痛みは分けてもらいたくないです」
夫「(唱和)じむでなにをしている」

妻、走り出す。

タカシ「しまった!」

タカシも走る。タカシと僅差で妻がタッチする。

夫「な? タカシくん!?」
タカシ「すいません、油断していました」
妻「私は、おすすめのプロテインが買える場所を教えてもらっただけ」
夫「プロテインだけで済んだのか! 夜のトレーニングもしたんだろ!」
妻「・・・最低のオヤジギャグ」

間。妻、鬼の位置へ。

タカシ「続けるんですか?」

妻、虚空を見て、体勢に入る。

妻「(唱和)おなじはかはいらない(同じ墓入らない)」

夫、ピタリと止まる。

タカシ「あの、これ、今、ゲーム中ですか? 独白の時間ですか?」
夫「待って。続けさせて」
妻「(唱和)ほんとはさびしかった」

と、静かに木の影に寄る間。

夫「(唱和)ゆるしてくれごめんよ」

と、その背中を見る。妻と夫向き合って。沈黙。

妻「(唱和)いいえゆるさないわよ」

夫、その場で土下座。

夫「(唱和)このとおりだあやまる」
妻「(唱和)たちなさいはずかしい」
タカシ「あの、だるまさんは・・・?」
夫「(土下座のまま、唱和)あのこにもうあわない」
妻「(唱和)しょくばであうじゃない」
夫「(唱和)あいつははにーとらっぷ(あいつはハニートラップ)」
妻「ハニートラップ?」
タカシ「リズム早くないですか?」
妻「急に何の話よ」
夫「全部、仕組まれてたんだ」
妻「・・・(あきれ気味)仕事の話?」
夫「会長の罠さ。僕が社長直下の出世頭だから、失脚を狙っている」
妻「そうだったの・・・!」
タカシ「まさかの”社内政治”」
妻「(唱和)こころきずついたまま」
夫「(唱和)どうすればいいんだい」
妻「(唱和)だきしめてよぎゅっと」

夫、顔を上げ、恐る恐る妻を抱きしめる。

夫「(唱和)これでいいかいこれで」
妻「(唱和)もっとつよくもっとよ」
タカシ「まだ昼間ですよ」
夫「(唱和)おまえだけだおれには」
妻「(唱和)うそよいつもくちだけ」
夫「・・・だよな」
妻「(小さく)・・・でも」
夫「え?」
妻「(唱和)でもあなたしかいない」
夫「じゃあ・・・やり直せる?」

妻、うなづいて。

妻「(唱和)こどもがほしいふたり」
夫「・・・え?」
妻「(唱和)つくろうよいますぐに」
夫「(唱和)だめだかれがみている」

二人、タカシの存在を思い出す。

タカシ「(手を振って)いますよー」
夫「(駆け寄って)タカシくん! ありがとな!」
タカシ「俺、何もしてないし・・・」
妻「(近づいて)ありがとう」
タカシ「お幸せに」
夫「(妻の手を取って)これから色々話し合おう」
妻「・・・ええ」

イチャイチャし始める二人。

タカシ「(唱和)いちゃいちゃすんなよ」
妻「(笑って)ごめんなさい」
タカシ「・・・これ、だるまさん、じゃなくて、“だんなさんがころんだ”ですよ」
夫「たしかに・・・」
妻「起き上がったのは?」
タカシ「“おとなさん”」

3人、互いに顔を見合わせて小さく笑う。

タカシ「(唱和)おじゃまいたしました」
夫婦「(揃って、唱和)おかまいできませんで」

暗転。

(了)

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このコントの創作のメモ

場面設定:だるまさんがころんだの途中で鬼が記憶喪失になっている
人物:夫婦・友人

起承転結


友人が妻に招かれて、夫婦の家にいる。友人が夫が動かないことを確認。妻はどうして動かないのかわからない。友人が手を振ったり、話しかけても夫は無表情で微動だにしない。妻が席を外すと夫が動き出す。夫は、妻と「だるまさんがころんだ(略称:だるころ)」をしていたのだが、妻が突然「だるころ」をしていることを忘れてしまい、夫はそれから妻がいる時には動けなくなっているという。なぞ現象に友人は冗談かと思ったが、妻が戻ってくると夫は、全く動かなくなってしまう。

再び妻が席を外す。夫に今までどうして過ごしたのか聞くと、「妻が見ていない隙にトイレにいったり、食事をしたり、と」語る。友人は「奥さんが見ていない時にタッチすればいいのでは?」と提案。夫は「それではダメ」だったという。解決するには「だるころ」を唱えてもらっている間にタッチしなければならないと仮説。では、友人を介して妻に「だるころ」を唱えさせようとする。

妻は友人から説明を受けて「だるころ」を行おうとするそぶりを見せる。が、口に出せず思い出す。自分は関西の人なので「ぼうさんがへをこいた」だった。なんだそんなこと、と笑っている友人だが、妻は真剣な顔をしている。「ぼうさんがへをこいた」と唱え、夫は動き出すが、タッチをしても変わらなかった。「だるころ」でなければダメなのか? やはり「だるころ」と言って、と頼むが、妻は拒否する。「だるころ」を言っている間に、逃げるかもしれないから、と。

だるまさんがころんだのは、「ルールを破った者が罰を受ける遊び」だったからだ。そして、夫は「自分が何か悪いことをしたと思い込んでいる人間」であり、妻は「そのことに気づかないまま、無意識に夫を裁いていた人間」だった。夫は、浮気未遂のLINEを消し忘れたことを「バレたかもしれない」と思い込み、妻の視線を「鬼の目」として受け止めていた。妻は、夫の態度に違和感を覚えつつも、疲れとストレスで「だるころをしていたこと」自体を忘れていた。その謎が解けたとき、友人はふと自分のことを語り出す。実は僕も、まだ遊びが終わってないんです。小4の時に始めたドロケイ、まだドロボウのままで。捕まってないんですよ。25年経っても。」夫と妻が「それ、終わってないの!?」とツッコむ中、友人は遠くを見つめながら言う。「たまに思うんです。大人になっても、終わってない遊びってあるんじゃないかって。ルールも、鬼も、誰が決めたかもわからないまま、ずっと続いてるやつ。」夫婦は顔を見合わせ、そして笑う。「じゃあ、そろそろ終わらせようか。」「うん、ちゃんとタッチして。」そして3人は、玄関の前で「だるまさんがころんだ」と「ぼうさんがへをこいた」を交互に唱えながら、静かにポーズを決める。最後に友人がぽつりとつぶやく。でもケイドロは、まだ終わってないからな

遊びの設定

だるまさんがころんだのルール

  1. 鬼(1人)を決める。ほかは子(逃げる側)

  2. 鬼は「だるまさんがころんだ」と言いながら壁などに向かって立つ。

  3. 言い終えた瞬間、鬼は振り向く

  4. 振り向いたときに動いていた子は鬼に見つかるとアウト(鬼のそばに戻るなど)。

  5. 鬼が再び壁を向き「だるまさんがころんだ」と言う間、子たちは鬼に近づく。

  6. 誰か1人が鬼にタッチすれば全員セーフ。次の鬼を決めて再開。

  7. 全員が捕まる前に誰かがタッチできるかの勝負。

地方によって、「動いたら鬼と交代」「鬼に触った人が勝ち」「逃げ戻る方式」など細部が異なる。

「だるまさんがころんだ」は、鬼ごっこの一種で、10拍を数えるために作られた合言葉的な掛け声が起源とされる。

  • 語源:10文字で数を取るため。「だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ」でちょうど10拍。

  • 役割:鬼が振り向く合図。数える言葉であり、**呪文というより合言葉(掛け声)**に近い。

  • 地域差:関西では「ぼんさんがへをこいた」など。世界にも類似遊び(例:韓国「ムクゲの花が咲きました」、英語圏「Statues」)。

  • 由来説

    • 達磨大師の転んでも起き上がる語感を借りた説。

    • 子供の語感遊びとして自然発生した説(主流)。

「だるまさんがころんだ」は数取りのためのリズム言葉であり、遊びの合図となる合言葉(唱え文句)。宗教的・呪術的な意味はない。

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