コント『アドベントカレンダー』 作:第三字宙 原作:コンチャイ 約6分(約2400文字)
登場人物:
スタッフ(アドベントカレンダーを無料配布する仕事をしている)
男(無料配布のカレンダーを欲しがる人)
12月間近の商店街。ジャケットを着て帽子を被った男が恨めしく紙を見ている。通りの真ん中では、企業が販促のために作ったアドベントカレンダーの無料配布準備をするスタッフがいる。
男「ちくしょう、また落ちたか。人手不足なんて嘘だ」
と、準備を終えたスタッフ。
スタッフ「アドベントカレンダーを無料で配布しています。クリスマスまでの期間をカウントダウンする特別なカレンダーです!」
男「クリスマス・・・もうそんな季節か」
男が近づく。
男「そのカレンダー、無料なの?」
スタッフ「はい。クリスマスまでのカウントダウンをする特別なカレンダーです。いかがですか?」
男「ふーん・・・、ください」
スタッフ「はい、どうぞ! 良いクリスマスを」
と、男、アドベントカレンダーを受け取って通りすぎる。
スタッフ「アドベントカレンダーを無料で配布しています。クリスマスまでの期間をカウントダウンする特別なカレンダーです! アドベントカレンダーを無料で配布しています───」
と、さっきの男が、ジャケットと帽子を脱ぎ、現れる。
男「ちょうだい」
スタッフ「あ、はい、どうぞ・・・?」
と、男、アドベントカレンダーを受け取って通りすぎる。
スタッフ「アドベントカレンダーを無料で配布しています。クリスマスまでの期間をカウントダウンする特別なカレンダーです! アドベントカレンダーを無料で配布しています───」
と、またさっきの男が、複数のアドベントカレンダーが入ったビニール袋を腕に引っ掛けて、誇張したオネエのような歩き方で現れる。
男「ねぇ、そのカレンダーくださらない?」
スタッフ「さっきの人ですよね?」
男「違うわよぉ〜、は・じ・め・て!」
スタッフ「ではないですよね? その袋に入ってますよね?」
男「・・・カレンダーがたくさん欲しいの」
スタッフ「あの、アドベントカレンダーって、クリスマスまでしか使えないんですよ。だから、たくさん持っていても、12/25になったら用済みなんです」
男は、スタッフの説明を「うんうんうん」適当に聞いており、
男「・・・ヤギ飼ってんだ」
スタッフ「どういうことでしょう?」
男「ヤギに食わせるんだ」
スタッフ「最近の印刷紙はインクが強いんです。ヤギが食べたらお腹壊しますよ!」
男「・・・」
と、男が諦めたように立ち去る。
スタッフ「本当に飼ってるのかな? ・・・アドベントカレンダーを無料で配布しています───」
男の声「大変だ!」
と、男が走って戻ってくる。
スタッフ「どうしました?」
男「向こうでプロレスやってる!」
スタッフ「え? マジすか? 行かなくちゃっ・・・」
と、その隙に男がアドベントカレンダーを奪おうとして
スタッフ「させないよ?」
と、見透かしているスタッフが男を捕まえる。
男「頼む、フリマアプリで売るものがなくなったんだ!」
スタッフ「転売屋か! こんなことして・・・あなたにも大事な人がいるでしょう? その人が泣きますよ?」
男「うう・・・実はな、家業が潰れて、このままだと年越せねぇんだよ。家には母ちゃんと5人の子供が腹空かせて待ってるんだよ」
スタッフ「だからって、無料で配ってるものの転売はダメですよ・・・」
男「あぁ、そうだな。・・・心機一転、事業を再開して、このカレンダーを来年の福袋に入れて売るぜ!」
スタッフ「だから、今年の12月24日までしか使えないカレンダーなの!」
男「なんだって? 今年で終わっちまうカレンダーを配ってたのか!?」
スタッフ「そう言ってるのに、あなた、何度も。 それに、カレンダーを福袋に・・・それ、センスないですよ」
男「う、痛いところつくな。そうなんだよ、俺、センスないんだ、何個も会社作って潰してるから、就職しようと思って。でも、どこも雇ってくれないし」
スタッフ「人手不足だっていうのにねぇ・・・、じゃあ、お小遣いくらいにしかならないですが、配布を手伝いますか?」
男「いいのか?」
スタッフ「えぇ、1時間分の時給を私がお渡ししますので、代わりにちょっと配ってください。私、ちょっと休憩してきます」
男「すまねぇな」
と、スタッフいなくなる。
男「えーと、なんだっけな・・・アドベ・・・、アルベルト、あど・・・アドベントって誰だよ! なんでもいいや・・・。カレンダー、カレンダーだよ! 今ならたったの100円! さぁ、買った買った!(客が来たようで)1つ? はいよ、メリクリ!」
と、次々と客が来る。男は水を得た魚のように生き生きと対応している。
男「はーい、もう売れ残り処分価格だ! ヨーロッパから取り寄せた高級カレンダー、クリスマスまでのカウントダウンが楽しめる、季節限定のカレンダーだよ! 今ならなんと、この高級カレンダー1個1万のところ、えーい、負けに負けて、なんと1000円! 1000円だよー! はい、1個ね。はい、あんた、5個? 欲張りだね、好きだよそういう人、おまけして3000円でどうだ! はい、押さないで、並んで! ここにあるので全部だよ!」
と、スタッフが戻ってくる。
スタッフ「すごい賑わいですね、どうしたんですか?」
男「無料に価値はねぇからよ、金額つけたら売れたんだ」
スタッフ「勝手に売らないでくださいよ!」
男「でも、配りたかったんだろ? 綺麗になくなったぜ」
スタッフ「・・・前言撤回します。あなた、商売の才能あるんですね」
男「うん、なんか、俺、路上販売の才能があるみたい。俺、売るより喋るのが好きだったんだな」
スタッフ「そうですか・・・。もしかしたら、その才能に気づけたことが、クリスマスプレゼントなのかもしれません」
男「そうだな・・・来年は路上販売で勝負してみるよ。ありがとな」
スタッフ「メリークリスマス」
(了)
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