登場人物:
歯科医
患者

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歯科医:はい。はい。お次の方どうぞ。

  患者入ってくる

歯科医:はい。どうしました?
患者:ここ、歯医者ですよね。
歯医者:そうですよ。お腹が痛くて来るわけないじゃないですか。いや、ま、それはそうなんです。あの、歯ですよね。
患者:歯ですよ。
歯科医:あ、はい。えっと、歯が痛い。
患者:歯が痛い。
歯科医:歯が痛い。はい。じゃあ、もうかもしれませんね。痛くないですか?
患者:え、2週間ぐらい前から痛みを感じて、えっとこの3日間は本当に痛くて耐えられないんです。
歯科医:えっと、奥歯ですかね?
患者:それと… はい。えっと、左、えっと、上の7番目。左上の左7番よ。
歯科医:あ、よくそんなん知ってますね。いや、助かりますけどね。ええ。あ、左上だな。なるほど。じゃあ、2週間前から随分ほっといたんですね。
患者:忙しいもんで。
歯科医:あ、そうですか。ま、しょうがないですね。じゃあ、そうしましたらですね、レントゲン取りますからね。レントゲン室の方に行きましょうね。
患者:レントゲン? あ、ちょっとお待ちになってください。 はい。レントゲンここにありますので。
歯科医:レントゲンあるんですか? ちょっと待ってください。なんでこれレントゲンがあるんですか? あ、あれですか? もう取られたとか?
患者: いえ、ここが初めてです。うちで取ってきました。
歯科医:あ、うちで取ってきた。うちにあるんですか?
患者: はい。歯医者です。
歯科医:歯医者。あなた、歯科医。
患者: はい。現役の…
歯科医: え、歯科医なんですね。
患者: はい。はい。ちょっと、見て。あ、あ。え、視界がぼやけたんですか?
歯科医:いや、これひどいですよ。これね、もう4段階から。
患者:分かってます。私だって年も取るし歯も悪くなるんです。そうですか。もう治療示しがつきませんよ、お客さんに。
歯科医:ま、確かに自分がなったら仕方ないですもんね。分かりました。もう助かりますけど、ごめん。はい。これ言ってんな。うん。よし、じゃあそうしましたね。えっと、今治療しますんでね。その後、あの、被せて、あの、詰め物をします。根管治療。
患者:いえ、抜いていただければ結構です。
歯科医:いや、抜きませんよ。根管治療分かります? 根管治療分かんないの?あなた何年やってんですか?
患者:やめてくださいよ。歯科医よ。50年ですよ。腕、1本で50年。うちの歯医者でしたら虫歯が来たら抜く、虫歯が来たら抜く、虫歯が来たら抜く。これで50年やってきた。
歯科医:それ古いんですって。今はですね、もう抜かないんですね。もう一生自分の歯で食べましょうってね、開けて治療してね、被せてやるんですよ。
患者:もういいんです。抜いてください。
歯科医:抜くとね、あの、こう歯がなくなりますよ。やっぱりそこはやっぱりこうじゃ、今回今最新治療ありますから。これほら、見てください。これ…。
患者:抜いてください。もういいです。
歯科医: じゃあそこまで言うんじゃ、抜きますよ。
患者:お願いします。
歯科医:いいんですね。
患者:いいです。
歯科医:後でなんか言いませんね。
患者:言いませんよ。
歯科医:じゃあそうしましたら、じゃあ麻酔ですね。じゃ、寝かせますよ。
患者:はい。ああ、素敵。え、何この椅子? 何? いいじゃない。素晴らしい。ここですよ。え、あの、あなたどんなやつ使ってんですか? 自分のはリクライニングですか?
歯科医: ええ、それはね、もう先生がそんなないですよ。
患者;今時これこうですから。はい。ね、ちょっとマッサージのボタン押してちょうだい。
歯科医:マッサージのあるわけないじゃないですか。そんなもん。歯医者ですよ。本当に。
患者: 本当に歯医者なのかな。うん。じゃ、行きますからね。え、これね。うん。
歯科医:はい。え、はい、行きますよ。はい。開けて。はい。うん。はい。ちょっと、ちょっと。

患者が動いて、歯科医に麻酔注射が刺さる。

歯科医:あら、手刺さっちゃったじゃないですか。
患者:大丈夫?
歯科医:ちょっと使えない。あ、あ、こっちも来た。
患者:こっちも来たってことですか? しょうがないわね。いいわ。自分で打つから。
歯科医: あ、できるんですか?
患者:50年。
歯科医:あ、はい。そうでした。
患者:ま、歯科医ですからね。ま、数回は打ったことあるんですよ。
歯科医:こっちも来た。
患者:ちょっと座ってください。
歯科医: はい。ちょっと待ってくださいよ。ちょっとなんで私が座るんですか?
患者:やだ、私もういつもの癖でごめんなさい。
歯科医:(意識のおのき)あ、ああ、またはちょっと
患者:あなたしっかりしてよ。私の歯どうしてくれんの? ま、いいや。別の歯医者に行こう。