コント『リアルワールドアドベンチャー』作:第三字宙

コント『リアルワールドアドベンチャー』作:第三字宙

2025-11-03

コント『リアルワールドアドベンチャー』作:第三字宙 約7分 (約2600文字)

登場人物
男:ゲームを楽しみにしているプレイヤー
男キャラ:ゲーム内のキャラ
女キャラ:ゲーム内のナビゲーター

男の部屋。ゲームコントローラーを持つ男。

男「待ってたぜ、新作ゲーム『リアルワールドアドベンチャー』。値段が高かったけど、自由度も超高いって評判なんだよな。理想の自分を作って、理想の世界で冒険だ! スイッチオン!」

ゲームが始まり、オープニング曲が流れる。

女キャラ「ようこそ、リアルワールドアドベンチャーへ! まずはあなたの分身を作成します、ベースとなるモデルを選んでください」

男キャラと女キャラが出てくる。

男「お、2つのタイプから選ぶんだな? どっちにしよかなー」
男キャラ「オッス! 俺だぜ!」
女キャラ「こんにちは! わたしよ」
男「どっちにしよかなー」
男キャラ「俺は力とか体力がある!」
女キャラ「わたしは美しい」
男キャラ「美しさとか、ルッキズムだぞ」
女キャラ「はぁ? 意味わかんないんですけど」
男「キャラクターセレクトでケンカすんな」
男キャラ「男だったら黙って男を選べ!」
女キャラ「性別で決めるのよくないと思う」
男「もういい、女キャラにする!」

キャラ決定の音。

男キャラ「え? ・・・くそーっ!!」

男キャラ、キャラクターセレクトエリアから外れて、説明エリアに移動する。

女キャラ「べ、別に、嬉しくないんだからね」
男「若干ツンデレか。ちょっと惹かれる」
男キャラ「(ふてくされて)えーと? 次は・・・顔のカスタマイズ? だってよ。変更したい箇所選べばー?」
男「えー・・・これからずっと、こんな感じ悪い説明聞かないといけないの?・・・やっぱ男キャラにしとこ」

キャラ決定の音。

男キャラ「! い、いいのか? こんな俺を選んでくれてありがとう!」
男「やたら感謝された」
女キャラ「乗り換え!? 信じらんない!」
男「キャラクターに嫉妬されるとは、このゲーム濃いな」

女キャラ、キャラクターセレクトエリアから外れて、説明エリアに移動する。

女キャラ「顔のカスタマイズを行います」
男「あ、女キャラはちゃんと感情と仕事割り切れるんだ、プロだ」
女キャラ「変更可能箇所:頬」
男「・・・それだけ?」

男キャラが頬を膨らませる動作をしてみる。

男キャラ「ハムスターみたいに膨らむだけだな」
男「もっとあるだろ、鼻とか目とか!」
女キャラ「頬を膨らませる、以上です」
男「現実より不自由! じゃあ体型変更! ムキムキに!」
女キャラ「体型カスタマイズを開始します。変更可能項目:お腹を膨らませる、背筋を伸ばす、膝を伸ばす、以上です」
男キャラ「いち、に、さん、し」

と、男キャラが各パーツを動かす。

男「ただの健康体操!」
女キャラ「リアルな体型変化を再現しています」
男「そういうリアルいらない! ゲームなんだからもっと夢を・・・」
女キャラ「キャラクター作成完了。年齢47歳、職業会社員に設定されました」
男「急に哀愁が出たな・・・」
女キャラ「では、街へ出発しましょう」

ゲーム内の街を歩く、男キャラ。

男「おお、街だ! めっちゃリアル! NPCも多い! よし、話しかけてみよう」

歩き出す。女キャラがNPCを兼ねている。女キャラ、姿を変えて登場。

男キャラ「すみませーん!」
女キャラ「(無視して通り過ぎる)・・・」
男「無視された!?」

女キャラ、姿を変えて登場。近づく。

男キャラ「すみません、この街のおすすめスポットは」
女キャラ「(冷たく)話しかけないでください」
男「冷たい! このゲームのNPC、距離感どうなってんの」
女キャラ「このゲームはリアルな人間関係を再現しています」
男「そんなリアルの再現いらないから!」

男キャラ、がっくりしながら歩く。

男「哀愁漂う背中だなぁ。はぁ・・・まぁいいや。自分で探索するか。ダッシュで」
女キャラ「あなたのキャラクターは疲れています」

男キャラ、疲労困憊のアクション。

男「はや!」
女キャラ「47歳の体力を忠実に再現しています」
男「そんなわけない! そんな47歳ばっかりだったら社会回らないよ!」
女キャラ「このゲームを開発した47歳の体力を参考に忠実に再現しています」
男「あぁ・・・デスクワークだもんなぁ」
女キャラ「休憩しますか?」
男「いや結構。走れ!」

男キャラ、走るがすぐに、

男キャラ「ひざ!」
女キャラ「膝に負担がかかっています。ベンチで休憩することをお勧めします」
男「ゲームで膝!? 初めてだ」

男キャラ、ベンチに座る動作。

女キャラ「休憩中。立ち上がるまで3分かかります」
男「長い!」
女キャラ「休憩中は、スマートフォンを確認できます」
男「お、やってみよう」

男キャラ、スマホを取り出す。

女キャラ「バッテリー残量8%。充電は自宅で」
男「出発3分で帰宅指示!?」

男キャラ、立ち上がろうとする。

女キャラ「立ち上がります。あ・・・」
男「『あ』って何!?」
男キャラ「こし!」
女キャラ「腰が・・・少々お待ちください」
男「腰まで! 満身創痍だ」

男キャラ、やっと立ち上がる。

男「あ、あそこに掲示板がある! クエストがあるんだよな」

男キャラ、掲示板を見る

男「えーっと・・・『猫を探してください』『近所の人に挨拶してください』『健康診断を受けてください』・・・
地味!」
女キャラ「あなたのレベルでは、日常クエストのみ受注可能です」
男「レベル上げしなきゃ」
女キャラ「経験値を得るには、『早起きをする』『バランスの良い食事を取る』『適度な運動をする』が必要です」
男「成人病対策か! もういい・・・あの建物入ってみよう」

男キャラ、建物に近づく。

男「ドキドキ」
女キャラ「入場には勇気が必要です。今日はやめておきますか?」
男「繊細だなぁ。いやでも、ゲームなんだ、全然平気、大丈夫、行こう!」

男キャラ、無理やり入ろうとする。

男キャラ「やっぱり今度にします」
男「コントロールを奪うな! だめだ、これ。全然自由じゃない。リアルすぎて逆にストレスたまるわ。理想の世界で、人生みたいな息苦しさを味わうとはな・・・」

しばらく考えて。

男「・・・でも、高かったんだよなぁ・・・せっかく買ったし、もうちょっとだけやるか」
女キャラ「お帰りなさい! キャラクターは寝落ちしていました」
男「寝落ち!?」
男キャラ「首が痛い・・・」
女キャラ「湿布を貼りますか?」
男「もうやめる!!」
女キャラ「返品には勇気が必要です」
男「もう黙ってろ!」

暗転。
(了)

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