コント台本『闇、明けました』作:第三字宙

コント台本『闇、明けました』作:第三字宙

2025-10-24

登場人物3名、上演想定約7分(約2729文字)

登場人物:

  1. 面接官(黒スーツ、色付きのメガネ。元闇組織幹部、真面目だが時折"怖さ"が滲む)
  2. 応募者(スーツ姿。闇バイト経験がある若者)
  3. ボス(白スーツ、優しい口調。元極道、更生したが時折怖い空気が出る)

夕方の薄暗い会議室。面接官と応募者が向かい合っている。面接官、応募書類を見たまま。長い沈黙。

面接官「・・・志望動機」
応募者「はい。すぐにでも働きたくて・・・」

また沈黙。面接官、じっと見つめる。

応募者「(焦って)あの、何か・・・?」
面接官「いや。真面目だなと思って」
応募者「え?」
面接官「最近、志望動機を『書いてください』って言われて、ちゃんと書いてくる人・・・少ないんだ」
応募者「普通じゃないですか!?」
面接官「・・・急いでいるのか」
応募者「はい。実は明日が家賃の支払い期限で・・・」
面接官「そうか(頷く)。じゃあ説明は手短に。前に、こういう仕事をしたことは?」
応募者「実は・・・一度だけ、応募したことがあって」
面接官「どんなところだ?」
応募者「面接がカラオケボックスで、LINEで『今から来い』って・・・怖くて逃げました」

面接官、書類を置く。ゆっくり顔を上げる。

面接官「・・・どこだ」(低い声)
応募者「え?」
面接官「その組織。どこだ」

間。応募者、固まる。

応募者「ひっ・・・」
面接官「・・・冗談だ」(普通のトーンに戻る)
応募者「(安堵のため息)」
面接官「うちはZoom面接も対応している。録画も残す」
応募者「ちゃんと・・・してるんですね・・・」
面接官「ああ。うちの"闇"は・・・少し違う」
応募者「違う・・・?」
面接官「今募集してるのは社員だ。闇『社員』」
応募者「正社員・・・」
面接官「遅刻は、しない方がいい。うちは"時間"に厳しい」
応募者「え、罰則とか・・・」
面接官「いや。始業チャイムが鳴ると自動で勤怠が記録されるだけだ」
応募者「・・・普通じゃないですか」
面接官「最近、みんなそう言う・・・」

突然、ドアが開く。ノックなし。ボス、蛍光灯の箱を持って入ってくる。

ボス「持ってきたぞ・・・おっ?」
面接官「ボス!」
ボス「これ、代えの蛍光灯。(と、面接官に渡す)面接前に新品に取り替えたかったんだけど、すまないね。暗くて」
応募者「あ、いえ・・・」

面接官、椅子に乗って蛍光灯を替える。パッと明るくなる。

ボス「(応募者に)来てくれてありがとう。最近、来てくれる人が少なくてね」
応募者「はい・・・」
ボス「"闇"って聞いて、どう思った?」
応募者「正直、怖かったです」
ボス「そうだよねえ(優しく頷く)。でももう大丈夫。俺たち、真っ白になったから」
応募者「・・・真っ白?」
ボス「ああ。まだ説明してなかったか。じゃあ俺が説明するよ」

机の前に来て、黒いアタッシュケースを指さす。

ボス「これ、見せていい?」

アタッシュケースを開ける。中には白い粉の入った袋が何袋も。

ボス「この中身・・・何だと思う?」
応募者「・・・わかりません」
ボス「(真顔で)白い粉だ」

応募者、立ち上がろうとする。

応募者「・・・っ!」
面接官「(静かに)座ってください」
応募者「い、いや、これは・・・!」
ボス「(遠い目で)昔は・・・違う意味で呼ばれてたけどな・・・」
応募者「(完全に誤解)」
面接官「ボス、早く言ってください」
ボス「(間)・・・片栗粉」
応募者「最初からそう言ってください!!」
ボス「でもこれがただの片栗粉じゃなくてね。北海道産の馬鈴薯でんぷんで——」
応募者「(時計を見て)あの、すみません・・・」
面接官「ボス、短めに」
ボス「わかった。じゃあ30分で」
応募者「30分!?」
面接官「ボス。面接中です」
ボス「・・・あんかけの滑らかさは?」
面接官「後です」
ボス「餃子のタレのとろみは?」
面接官「後!!」
ボス「・・・(残念そうに)わかった」

間。気を取り直すように。

ボス「あと大事なことがある。法令遵守だ」
応募者「法令遵守・・・」
ボス「うちは『闇明けハラスメントゼロ宣言』がある」
応募者「闇明け・・・?」
面接官「元闇企業として、過去の『闇』を言い訳にしたパワハラを禁止する社内規定です」
応募者「具体的には?」
ボス「例えば『昔はこんなの当たり前だった』とか」
面接官「『俺たちの時代は徹夜が普通だった』とか」
ボス「そういう"闇明け自慢"、全部アウト」
応募者「・・・普通にいい会社じゃないですか!」
ボス「(誇らしげ)だろ?」
面接官「違反したら片栗粉研修3時間です」
応募者「それは罰ですよね!?」
ボス「(真顔で)学びだ」
応募者「絶対罰!!」

面接官、書類を取り出す。

面接官「あと、入社にあたってこの書類に記入を」
応募者「・・・家族構成と、緊急連絡先・・・」
面接官「はい」
応募者「・・・これ、書いたら戻れないやつじゃ・・・」
面接官「戻れる。退職届はPDFで提出可能だ」
応募者「PDF・・・」
ボス「退職金制度もあるぞ。3年以上勤務で」
応募者「退職金・・・」
面接官「健康診断は年2回。有給消化率95%」
ボス「正直、こんなに前向きな応募者は久しぶりなんだよ」
応募者「(明るく)で、いつから働けるんですか? 家賃が明日までで・・・」
ボス「ああ、それな・・・」
面接官「特に問題なければ採用です」
応募者「本当ですか!? じゃあ今日から!!」
ボス「よし、すぐ雇おう!」
面接官「(キッパリ)ダメです」

間。

ボス「え?」
面接官「労基署に怒られます。前回も指導受けたじゃないですか」
ボス「あれは試用期間の書類を・・・」
面接官「2週間忘れてました」
ボス「うっ・・・」
応募者「(小声で)ちゃんとしてる・・・じゃあ明日から!」
面接官「明日も難しいです」
応募者「え・・・?」
面接官「雇用契約書の作成、社会保険の手続き、入社前研修が3日間——」
応募者「(焦って)で、結局いつから働けるんですか!? もう時間が!!」
面接官「年度内には採用できるかと」
応募者「年度内って3月!!」
ボス「予算の承認が下りれば」
応募者「予算!?」
面接官「取締役会の議事録も必要で」
応募者「議事録!?」
ボス「コンプライアンスだから」
応募者「(立ち上がる)もういいです!!」
面接官「待ってください!」
応募者「何がホワイト企業ですか! ホワイトすぎて逆に働けません!!」
ボス「前払い制度もあるぞ!」
応募者「いつからですか!?」
面接官「・・・年度内に・・・」
応募者「(呆れて)もう・・・闇バイト探します!!」
ボス「闇バイトはダメだ!」
応募者「そっちのほうが早く働けます!!」

応募者、バタンとドアを閉めて退室。沈黙。

ボス「・・・また断られたか」
面接官「はい・・・」

間。

面接官「(タブレットを操作)退室時刻、記録しました」
ボス「ご苦労」
面接官「・・・履歴書、個人情報保護のためシュレッダーかけますか?」
ボス「ああ、頼む」

ウィーンという機械音。二人、黙って書類を見ている。

面接官「・・・"闇"、遠くなりましたね」
ボス「でんぷんみたいに・・・透明になる」

間。二人、書類を見つめたまま。照明、ゆっくり暗転。

(了)

このコントの創作のメモ

場面設定:いわゆるヤミバイトの会議室
人物:面接官・面接者・ターゲット

闇バイトに面接に来た。闇バイトのコンプライアンス意識の高さと、その業務内容に驚きを隠せず、面接者は入社を諦める。名前はバイトだけど、正社員希望なのである。

起承転結


いかにもその筋の雰囲気の面接官が応募書類を読み目をあげて「志望動機は?」と尋ねる。採用希望者は「はい、御社の社風に賛同して、闇バイトを希望しています」と答える。面接官は「うちは今、バイトは募集していなくて闇社員だけれど、大丈夫か?」と、雇用形態の確認をする。

闇業務委託と闇パートもやっていない。仕事内容は、アタッシュケースにいれられた白い粉を運ぶが、これは、高級片栗粉だから安心していい。そして店舗に行く。「強盗ですか?」「納品だ、片栗粉の納品だ」

「入社には家族や学校の住所を教えてもらう」「・・・失敗した時の脅迫に使うんですね」「保証人だ。年末調整の扶養家族や何かあったときのための緊急連絡先を知っておく必要がある」

「問題なければ採用。いつから来てもらえるか」「今日はちょっと難しい」「もちろんだ。今日はもう定時だから、終わりだ」「明日も難しい」「もちろんだ。明日から来てもらっても書類手続きの準備がある」「では、いつならいいのか」「1ヶ月後以降なら諸々の手続きをすませて、受け入れる準備ができる」「なら初めからそう言ってください」「すまない」「闇に甘んじて、指示説明が不足しているのはいただけません」「善処する」

─────────

闇バイトとは
具体的な仕事内容を明示せずに高額な報酬で人を募集し、詐欺の受け子や出し子、強盗の実行犯などの犯罪行為に加担させる違法なアルバイトのことです。SNSやインターネット掲示板で甘い言葉で募集され、応募者は犯罪組織の使い捨て要員として利用され、逮捕されれば懲役や損害賠償の重い罰を受けます。闇バイトは犯罪であり、個人情報を奪われたり脅迫されて辞められなくなるケースも多いので絶対に関わってはいけません

闇バイトの特徴
- 仕事内容を明確にせず、違法な犯罪行為を隠して募集する
- 短時間で高収入と謳い、SNSや匿名アプリを使って連絡する
- 応募すると個人情報を提出させられ、組織から脅迫されて抜けられなくなる
- 実際には特殊詐欺、強盗などの犯罪の実行者や支援者として使われる
- 犯罪組織にとっては使い捨ての存在となる

社会問題としての闇バイト
闇バイトは、主に若者がSNS経由で簡単に応募できてしまうことから増加しており、犯罪加担による逮捕者も後を絶ちません。近年では、闇バイトによる強盗や詐欺事件が続発し、警察や自治体が危険性の啓発活動を強化しています[2][4][7][8].

注意喚起
- アルバイト募集で「高額」「即日現金」「副業」「書類受け取りだけ」などの言葉に注意する
- 匿名性の高いアプリのインストール要求や仕事内容の曖昧な募集は疑う
- 怪しいと感じたらすぐに友人や家族、警察に相談すること

闇バイトあるある
- SNSやネット掲示板で「即日現金」「高額報酬」「簡単な仕事」など甘い言葉で募集される。
- 仕事内容がはっきり説明されず、「受け子」「出し子」「運び屋」など犯罪行為の助力を目的としている。
- 応募時に顔写真や身分証明書、家族の個人情報などを送信させられ、グループからの脅迫や制裁(家や職場への訪問・学校や家族への嫌がらせ)で抜けにくくされる。
- 犯行グループに「報酬は後払い」「報酬なしで次の仕事を強要」され、結果的に報酬を得られず捕まる例が多い。
- 犯行グループに密告されて逮捕されたり、一方的に利用されて使い捨てにされることが多い。
- キャリーケースを持って全国を転々とさせられたり、ホテルや漫画喫茶で寝泊まりしながら犯罪を強いられる場合も。
- 仲間で計画的に金を持ち逃げしようとしても裏切りや密告で逮捕されることもある。
- 脱退希望を言うと脅迫され、恐怖で犯罪組織から抜け出せない人がいる。
- 逮捕後は組織に見捨てられ、重い刑罰を受ける。

アルバイトあるある
- シフト制が多く、週数回・1日数時間の勤務が普通で自由に働きやすい。
- 時給制で、働いた時間に応じた給与が支払われることが多い。
- 仕事内容は比較的単純・軽作業の場合が多く、責任は正社員に比べて少なめ。
- 交通費や社会保険、福利厚生の待遇は正社員と比べて劣ることがある。
- スタッフ間の連携がうまくいかず、シフト調整や交代が大変という声もある。
- バイト先のルールや職場の文化は多様で、慣れるまで戸惑うことがある。
- 学業や他の仕事と両立しやすい一方、収入や昇給の面での安定感は低め。
- 長く働き続けると、アルバイトでも昇給や役職がつく場合もある。
- 正社員との壁(責任感や仕事内容の違い)を感じることも多い。
- 気軽に辞められる反面、交代や欠勤が多いと職場に迷惑がかかることも。

パートとアルバイトの違い
法律上はどちらも「短時間労働者」として同じ扱いであり、法的に明確な区分はありません。ただし、一般的な使い分けや企業ごとの呼称の差異として以下のポイントが挙げられます。

呼称と対象層の違い
- パートは主に主婦(主夫)やシニア層を対象に、安定した長期的な勤務を前提とした募集で用いられることが多い。
- アルバイトは主に学生やフリーターなど短期や不定期勤務を希望する若い層を対象とし、特に夕方や土日祝のシフトに多い。

勤務形態・仕事内容の違い
- パートは比較的平日昼間の時間帯、長期的に職場のチームの一員として安定した勤務を期待され、レジ業務以外に発注や在庫管理など責任のある業務が増えることがある。
- アルバイトは仕事内容が比較的単純で補助的な業務が多く、短期や繁忙期の人手不足補充としての性格が強い。

報酬や待遇の違い(傾向)
- パートは時給制だけでなく、月給制や日給制を採用するケースもあり、昇給や賞与が期待しやすい。
- アルバイトは主に時給制で、昇給や賞与はない場合が多いが、長期間勤務して役職がつくこともある。

法律的取り扱い
- 労働時間や社会保険の加入条件、労働条件の差異は基本的にパート・アルバイトで差はない。
- 企業は求める人材の層や働き方のイメージに応じて使い分けているが、法的に労働者区分としては同等

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