コント『クリスマス・コンストラクションサイト』作:第三字宙

コント『クリスマス・コンストラクションサイト』作:第三字宙

『クリスマス・コンストラクションサイト』作:第三字宙 約5分(約1920文字)

警備員:工事現場の警備員
男:工事にクレームを言う男

警備員が工事現場の交通整理をしている。

警備員「(寒さで震えながらも、無理やり笑顔)はーい、すいません、工事でご迷惑おかけします。あ、お足元、お気をつけて、はーい、クリスマスに、すいません、ご迷惑おかけしています、あ、メリークリスマース」

と、機嫌の悪い男がやってくる。

男「おい」
警備員「あ、どうも、ご迷惑おかけしています、クリスマスにすいません、どうぞ、お気をつけて、メリークリスマス」
男「メリークリスマスじゃねえよ、うるせえよ!」
警備員「・・・すいません、工事中なもので」
男「なんで年末に工事すんだよ」
警備員「突貫なもので、すいません。どうしました?」
男「あぁ? ・・・この辺、イルミネーションがきれーだっていうから、来てみたら、お前、工事してんじゃねーか! ・・・こっちはな、デートで来てんだよ!」
警備員「あぁ・・・、すいません、イルミ間に合わなくて、今、作ってるんで」
男「なんで今作ってんだよ! クリスマスまでに間に合わせろ!」
警備員「ほら、今年、暑い時期、長かったでしょう? 油断してたら12月になっちゃいまして」
男「リアルな気温で季節を判断するな! 暦で判断しろよ!」
警備員「こよみってなんですか? 音読み?」
男「訓読み!」
警備員「あぁ、カレンダーのことですね」
男「わかってんのか!」

工事の音が反論するように鳴る。

男「せめて、止めろ、工事の音がうるせーんだよ! サイレントナイトっていうだろ!」
警備員「ウーウーウー」
男「・・・」
警備員と男「サイレンの、ナイト」
男「うるせえよ! 二つの意味でうるせえっ!」
警備員「どうか、落ち着いて・・・」

間。

男「・・・工事止めないんだったらな、暴れてやるぞ」
警備員「やめてくださいよ! そんな暴れたりしたら、完成が遅れるじゃないですか!」
男「完成ったってよ! いつ終わらせるんだよ」
警備員「きよしです」
男「きよし?」
警備員「あ、今夜です」
男「きよしこの夜か! またサイレントナイトか!」
警備員「では、お詫びに讃美歌どうですか? 工事現場のメンバー音楽やってますんで」
男「工事現場のメンバーで? やってみろよ」
警備員「ありがとうございます。 (と、工事現場のほうへ声をかける)おーい、みんなー! サイレントナイトだぞー! 今度は音楽で!」

と、工事の音が一度止まる。

警備員「さんはい!」

と、合図で、工事の音でサイレントナイトが奏でられる。

男「うるさい! サイレント感ないよ! やめだ、やめだ! 工事中止ー! 中止ー!」
警備員「やめてください、工事の邪魔しないでください! お、お兄さん、デートですよね? 彼女さん、待たせて大丈夫ですか?」
男「あ? う、うるせぇよ! 工事止めるの待ってるんだよ! 向こうで!」
警備員「そうなんですか、じゃあ、もう少し、お待ちください、もうちょっとで完成しますから」
男「完成? もう完成するの?」
警備員「はい」

と、工事の音がいつの間にか止んで、今度こそ、清らかなサイレントナイトが聞こえてくる、そして、煌びやかな大きなクリスマスツリーが2人の前に現れる。

男「でっか!」
警備員「世界一の巨大クリスマスツリーです」
男「なんだよこれ、夢でも見てるのか?」
警備員「彼女、連れて来ないんですか?」
男「・・・いねーよ」
警備員「え?」
男「彼女なんていねーよっ!」
警備員「・・・」
男「シングルベール! シングルベール! お・れ・ひーとりー!」
警備員「・・・(やさしく肩を抱き)そうだったんですか」
男「・・・イルミ、見に来て正解だったかもな・・・地球上で一番盛り上がらないクリスマスでも」
警備員「1人じゃないですよ、ほら」

と、周りを見渡すと、たくさんの人がツリーを見上げている様子。

男「みんな、クリスマスツリー見てるな・・・」
警備員「ね、みんな、幸せそうな顔しているじゃないですか、誰と一緒にいたって、1人だって、こうしてみんなで同じ光を見ている、それだけで、温かい気持ちが共有できませんか?」
男「・・・そうだな」
警備員「・・・さて、私はもう撤収します、これから別の仕事に」
男「また別の工事現場か?」
警備員「いえ。今度は配達です!」

と、警備員が舞台袖に捌けて消える。男がツリーを見上げて、空に何か飛んでいるを見つける。

男「・・・あれ、空に・・・トナカイ? ソリ? ま、まさか、あいつ、サンタクロース!?」
サンタの声「ほーほっほっほっ! メーリークリスマース!」

と、警備員がウーバーイーツっぽい格好で戻ってくる。

警備員「ねぇっ! あれサンタクロース!?」
男「じゃ、お前誰だよ!?」

(了)

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このコントの創作のメモ

お題「12月」
場面設定:繁華街の工事現場
人物:工事現場の人、カップルの男

─────────

工事現場のあるある:
騒音、景観が悪くなる、なんでいつも年末に工事してる?、

クレーマーのあるある:
大きな声で文句を言う、支離滅裂、ただ起こりたいだけ、世の中に不満がある、誰かに文句を言って溜飲を下げたい、

クリスマスイブ、クリスマスになんで工事?:
構築する、ツリー、サンタ、トナカイ、プレゼントは物じゃなくてもいい、

下書き


カップルでイルミネーションが綺麗な場所に来たが、工事現場とその音が邪魔で集中できないとクレームを男がやってくる。


警備員はなんとかなだめすかそうとするが、男のクレームが悪化していく。


ところが一点、なんと工事が完成した。そして立ち上がる超巨大なクリスマスツリー。男も実はただの独り身の社会にあぶれた人間だったが、ツリーを見て心を奪われる。


来年は、もっと大きなツリーを立てて、もっとみんなを楽しませたいと、工事現場の人々がサンタになって飛んでいく。男は、自分も誰かを喜ばせることをしたい、と心にプレゼントをもらって、メリークリスマスと唱える。

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