コント『デモ行進』作:第三字宙 約4分半(約1700文字)
登場人物:
デモA
デモB
デモC
警護
デモ行進の警護にあたっている警官、デモ行進の人々。
いったいなんのデモなのか。
デモA・B「はんたーい! はんたーいい!」
警護「(バインダーに挟まれた書類を見ながら)すいません。届出を確認したいんですが・・・これ『趣旨:反対』とだけで。何に反対されてるんですか?」
デモA「反対です」
警護「だから、何に?」
デモA「とにかく反対! 趣旨なんて関係ないんです!」
デモB「(無理やりに)はんたーい!はんたーいぃ!」
警護「(デモBに)あの、何に反対されているのですか?」
デモB「わかりません、反対をしろと言われているので」
警護「反対をしろと言われているから?」
デモB「でも…でも、誰かが“はんたーい!”って言うと、なんか言わなきゃいけない気がして…!」
警護「義務感で反対しないでください」
デモB「(警護に)……これ、今日、賛成のデモじゃなかったでしたっけ」
警護「(プラカード見て)「何かに反対」とだけ書いてますけど・・・」
デモA「それでいい、それがいいんです! 気持ちが大事!」
警護「いや気持ちじゃなくて内容をですね・・・」
デモC、到着、自転車のヘルメットを外しながら登場
デモC「すいません、今来たんですけど、デモはこちらですか?」
警護「あなたは何に反対なんですか?」
デモC「人混みです」
警護「・・・じゃあ、なんでデモに」
デモC「流れに逆らうのが好きなので」
警護「そうですか。でも今その“流れ”に乗ってますよ」
デモC「それにも反対です」
デモA「とにかく『賛成』に反対だ!」
警護「どうやら賛成に反対されていますが、あなた、どちらなんですか?」
デモB「それも分かりません・・・」
デモC「みんなが反対なら、私は賛成します」
警護「じゃあ賛成なんですね」
デモC「でもそれにも反対です!」
デモA「はんたーい!」
デモB「え、あ、はんたーい!」
デモC「賛成でも反対でもなーい!」
警護「だから、何にどうなんですか」
デモC「みんなが反対してるから、私は賛成します。…でもそれにも反対です!」
デモA「はんたーい!」
デモB「は、はんたーい!」
デモC「賛成でも反対でもなーい!」
警護「何をどうしたいんですか!」
デモA「わかりました! もう反対するのやめます!」
デモB「え? さ、さんせーい!」
警護「いや、急に賛成されても・・!」
デモC「賛成でも反対でもなーい!」
デモA「そもそも、私が何に反対してるのか、私自身も反対なんです」
警護「あなた自身に反対って、自己否定ですか?」
デモA「(急に後ろを振り返り)自分に自信が持てない時代に、はんたーい!!」
デモB「さんせーい! え?賛成じゃない? は、はんたーい!」
デモC「流されがちな自分、はんたーい!!」
警護「このデモは、どこに向かってるんですか」
デモA「どこかに向かうこと、はんたーい!」
と、デモAが逆に動き出し
デモB「どこかに向かわないこと、はんたーい!」
と、進路を維持するデモB
デモC「集団行動はんたーい!」
と、デモCも別の方向へと向かう。
警護「あぁ! ダメですよ、デモの進路は届出通りにしてもらわないと」
デモA「予定調和はんたーい!」
デモB「い、意味のない逆張り、はんたーい!」
警護「仲間割れしないでください」
デモC「情や絆を盾に人間関係を縛るのはんたーい!」
警護「縛ってないです! とにかく、デモは届出通り、この先の交差点まで行って解散してください!」
デモA「解散はんたーい!」
デモB「でも、継続も・・・はんたーい!」
デモC「どっちでもないけど、はんたーい!」
警護「じゃあどうしたいんですか!」
デモA・B・C「(顔を見合わせて)……わかりません!」
警護「わからないなら、反対するな! もう、帰ってください!」
デモA「帰宅はんたーい!」
デモB「(警護の顔色を窺いながら)で、でも残留も・・・はんたーい!」
デモC「存在自体はんたーい!」
警護「存在を否定しないでください!」
デモ隊、最後は三人がバラバラの方向に去っていき、警護だけが残される。
暗転。数秒の静寂ののち、遠くから「はんたーい!」の声。
さらに遠くから別の声「さんせーい!」
さらに別の声「賛成でも反対でもなーい!」
警護「(深いため息)明日も“何か”に反対されるのか…」
(了)
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