「…おい、そこの駐車場見てみろ」
「うわ牛っ!牛車か?どこの公家がとめてんだろう」
「駐車場の隣にはいかがわしいホテル」
「七夕に牛車でラブホて。彦星織姫プレーか」
「お前、短冊持ってるか?」
「持ってないよ。オマエ、短冊で何すんだよ」
「決まってるだろ、直接渡すんだ」
「誰に?」
「わかんない奴だな。この牛の持ち主に!彦星さんと織姫さんに!」
「落ち着け、彦星と織姫はこんなところで会わないって」
「お前、夢見過ぎ。恋人なんだから、そりゃラブホくらい来るだろ。もっと現実を見ろよ!」
「オマエだ!」
「なぁ、さっきコンビニのレシートちょうだい」
「何に使うんだよ」
「短冊のかわりにする」
「失礼だろ!仮にこのホテルにいるのが本物だとしたら失礼だろ!」
「どうしても叶えたい願いがあるんだ!」
「書いたらどうすんだよ。ラブホから出てくるまで待つのか?」
「いや、それはお前、さすがに出て来た直後に渡すのは失礼だろ。牛に貼り付けとくよ」
「それじゃ駐禁の紙みたいだぞ」
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ。早くしないと出てきちゃうだろ」
「わかったよ、もう好きにしろよ。ホラ」
「(レシートを受け取り)もっと長めのない?」
「いいだろそれで!どんだけ書く気なんだよ。願いごとはシンプルなのにしとけよ」
「七夕デートしてくれる彼女ができますように、俺たちに」
「ありがとう…」
おわり