『ランナウェイ』作:はっちゃんがらんなうぇい 約6分 (約3000文字)
面接官:地獄行きか天国行きかを決める
亡者:面接を受ける
面接官が座って、見えない誰かに結果を言い渡す。
面接官「そんなに暴れてもあなたは地獄行きなことは変わりませんから。暴れたら罪が重くなりますよはい、そうです。素直にあっちに行ってください。地獄にバイバイ。次の方」
亡者が入ってくる。
亡者「失礼します」
面接官「何かいい人そうって言われません?」
亡者「いえ、そんなことないです」
面接官「こうなんか、優しそうな雰囲気だなと思って」
亡者「全然です」
面接官「謙虚なんですね。・・・地獄?」
亡者「地獄ですか?」
面接官「ここに何か、地獄行きって書いてあって」
亡者「地獄行き」
面接官「いえ、ちょっと待ってください、あの・・・地獄って結構悪いことした人しか行かないところなんですけど、何か心当たりあります?」
亡者「いっぱいあります」
面接官「あるんですか?」
亡者「はい」
面接官「いっぱいあるんですね?」
亡者「はい」
面接官「え、じゃあ、一つ何やっちゃったか一応確認のために教えていただけますか?」
亡者「はい あの・・・電車に乗りますと」
面接官「はい」
亡者「よく目の前にお年寄りの方が立ってらっしゃるんですけれども」
面接官「そうなんですね」
亡者「自分、そういう時は必ず寝たふりをしてます」
面接官「この優先席でとかではなくて」
亡者「一般の席で」
面接官「なるほど。別にいいんじゃないかな」
亡者「すごい座りたそうにしてた」
面接官「私は現世の時はよくやったなって感じなんですけれども、それをちゃんと悪いことだと思っていらっしゃると」
亡者「はい」
面接官「真面目なんですね。あ、これちょっと弱いかなって感じなんで、何かもうちょっと悪い、あくどいことがあったりしますか?」
亡者「自分、ケーキの配達をバイトしているんですけれども」
面接官「偉いですね」
亡者「昨日、クリスマスイブでクリスマスケーキを運んでたら、配達先の方がだいぶ酔っ払っていらっしゃって『お前もケーキを食うぞ!』って顔面に当然ギューってされたんです」
面接官「え、その時?」
亡者「窒息して亡くなりました」
面接官「かわいそう」
亡者「年末の糞忙しい時に自分だけ死んでしまって、周りに迷惑をかけてしまったなって思ってます」
面接官「謝らなくてもいいです」
亡者「本当に申し訳ない」
面接官「かわいそうです、あなた」
亡者「もうちょっと避ければ、俊敏に避ければ良かったなって」
面接官「なるほど、他の人が悪いことも、自分にも悪いところがあったかもしれないって反省をしてらっしゃる」
亡者「はい」
面接官「いや、偉いですね。全然臆病じゃないです。・・・ちょっと地獄行きは・・・なんか本当に現世で生きてた中で一番の悪行、これは悪かったなっていうことを、一番の悪を教えてください」
亡者「先週、美容院に行きまして。頭を洗ってもらっている時に、美容師さんが『お痒いところございませんか?』って」
面接官「シャンプーの時」
亡者「いつも遠慮してありませんって言うんですけど、『あります』って答えたら、『えっ?』って言われて、困っていましたよね」
面接官「それ、別に」
亡者「いや、困らせた」
面接官「なかなか言われることもないじゃないですか、痒いって言われた際の対応の仕方とかが学べて良かったんじゃないかな。っていうか勇気ありますね、私も結構言えないですけど」
亡者「言えないですよね」
面接官「でも今日、聞いた感じ、地獄行きなの、多分間違いないんじゃないかなって思うので。ちょっと私掛け合ってくるので、ここでお待ちいただいていいですか?いって来るんで、ちょっとだけ待っててください」
と、面接官が去ろうとする。
亡者「待ってくれ」
面接官「はい」
亡者「らんなうぇい」
面接官「そう呼ばれてた時期もありました」
亡者「らんなうぇいだよな?」
面接官「はい」
亡者「俺のこと分かる?」
面接官「もしかしてお兄ちゃん?」
亡者「そう、しんいち」
面接官「ちょっと変わったね」
亡者「あれから15年経ってるから」
面接官「そうか」
亡者「お前、変わらないな」
面接官「だって、わたし、死んじゃったから。ここいたら時間経たないから」
亡者「会いたかった」
面接官「お兄ちゃんケーキで窒息して死んじゃったんだね」
亡者「恥ずかしいけど」
面接官「変わってないねお兄ちゃん」
亡者「俺さ」
面接官「うん」
亡者「お前に会うためにここに、会うためにここに、来たんだよ」
面接官「ために、ケーキで窒息したの?」
亡者「そう儀式があってさ」
面接官「うん、どうして?」
亡者「聖なる夜に」
面接官「聖なる夜に」
亡者「ケーキで窒息して、それから24時間は、また現世に戻れるんだ」
面接官「そうなんだ。結構勤めて長いけど知らなかった」
亡者「お前を連れて逃げ出すためにここに来たんだよ」
面接官「もしかして、ほんとにお兄ちゃんが地獄行きだったなんて」
亡者「これからする悪行なんだ」
面接官「そうなんだ。お兄ちゃんのその決意、しかと私受け止めたい。一緒に現世に戻ろう」
亡者「行こうぜ」
面接官「行こう!」
と、2人、舞台袖近くに捌けるが、寸前で留まって。
面接官「いい感じ。昨日よりめっちゃ良くなってる」
亡者「本当に?」
面接官「これならキングオブコントてっぺん取れるよ」
亡者「取れるかな?」
面接官「自信もって!だって最初の時なんてさぁ固まってたじゃん」
亡者「でもお兄ちゃん芸人じゃないんだよ」
面接官「でも私やりたいから手伝って」
亡者「もちろんだよ。お前がやるっていうんだったらやるよ」
面接官「これでお兄ちゃんと一緒にてっぺんとろう」
亡者「おう!」
面接官「お前本当に、面白い女だからな」
2人「いえーい!」
と、グータッチ。
(了)
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お題「12月」
登場人物:幽霊
場所設定:天国と地獄
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こんのコメント:
約6分の作品で、舞台設定が「天国と地獄」登場人物が「幽霊」と、非日常×非日常ですが、キャラクターは日常で親しみやすく描かれていました。設定は抽象ながらも明確な世界観の中、亡者と面接官のやり取りを軸にコントがしっかり組み立てられているのが印象的でした。
良い点。
地獄行きの判定や亡者の告白というシチュエーション自体に面白さがあり、特に「電車で寝たふり」「クリスマスケーキで窒息」といったエピソードが日常の延長線上のあるある笑いを企てています。さらに、最後に亡者が兄であることが明かされ、面接官と現世に戻るためのやり取りに繋がり、さらにもう一つ上のメタとして、実はコントの練習をしていた、メタ構造は、感動ドラマに終わらせないようにした「笑い」の目的を忘れていないことを示しています。
展開について。
前半の「地獄判定〜自己申告」→中盤の「悪行エピソード連打」→後半の「兄妹の再会と脱出計画」と三部構成(さらにどんでん返しがありますが)が明確で、テンポも概ね良好です。中盤の軽妙なやり取りから、終盤の感情的な展開への移行も自然で、観客の引き込み方がうまくできています。
ツッコミについて。
面接官の「それ、別に」とか「かわいそう」といった軽い反応が、リアクションとしてツッコミ役を果たしており、演技でメリハリを付ける典型例になっています。リアクションの幅をさらに増やすと、笑いのリズムがより強化されます。
技術面。
セリフの間や呼吸、表情の変化が笑いのテンポに直結する構造なので、演者の声量や間の取り方を意識すると、完成度がさらに上がります。ラストの「一緒に現世に戻ろう」からグータッチまでの流れも、観客に爽快感を残す締めになっています。
全体として、キャラクターの立ち位置が明確で、展開が見事な作品でした。ブラッシュアップで細部のリズムを詰めれば、6分尺でも強い印象を残すコントになると思います。この間は活かしたいと思いつつ、尺を縮める時にのネタの取捨選択も必要かもしれません。

