コント『おとなさんがころんだ』作：第三字宙

コント『おとなさんがころんだ』作：第三字宙約3分（約1200文字）
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コント『おとなさんがころんだ』作：第三字宙約3分（約1200文字）

登場人物

夫(35歳) - 何かやらかした様子
妻(33歳) - 怒っているが冷静
タカシ(30歳) - 独身の友人、空気を読む男

公園のベンチ付近。昼下がり。

タカシ: (二人の間に挟まれて)あの…お二人とも、公園まで来たんだし、少し落ち着きません?
妻: 落ち着いてますけど。
夫: タカシ、悪いな…巻き込んじゃって…
タカシ: いやいや、俺が「外で話そうよ」って言ったんだし…(間)そうだ! せっかく公園に来たんだし、何か体を動かしません? 気分転換に!
妻: は?
タカシ: だ、だるまさんがころんだ! とか!
夫: …今?
タカシ: ほら、子供の頃よくやったでしょ! 懐かしいじゃないですか! 三人いれば丁度いいし!
妻: …くだらない。
タカシ: でも、このまま睨み合ってても仕方ないじゃないですか! ね! お願いします!
妻: (ため息)…好きにすれば。
タカシ: よし! じゃあ俺が最初鬼やります。 (木に向かって)じゃあ行きますよ!「だーるーまーさーんーがー…ころんだ!」(振り向く)

夫と妻が固まっている。かなり離れた位置に立っている。

タカシ: おお、いい感じ! だーるーまーさーんーがー…

と、妻がタカシにタッチする。

妻: タッチ
タカシ: はや！
妻: もう終わりでいい？
タカシえぇ？いやぁ…せっかくなんで、鬼やりません？
夫怒ってて怖いから、ぴったりだな
妻はぁ？
夫な、なんだよ？
妻はぁ…
タカシまってまって！楽しく、楽しくやりましょう。(妻に) 鬼、お願いします
妻 …

と、妻が鬼の位置につく。タカシと夫が位置に着く、なげやりに妻。

妻だるまさんがころんだ

タカシと夫、ちょっとしか動けない。

妻全然動いてないんだけど？やる気あんの？ …だるまさんがころんだ

タカシはやい
夫はやいよ
妻しゃべるのいいんだっけ？

タカシと夫、黙る。

妻ー…

間の長さに、タカシと夫がハテナマーク。

妻 …ぱぱかつでうわきした？

夫、顔面蒼白で固まる。妻、振り返り、

妻: 動けないわよね。やましいことがあると
夫: (固まったまま、小声で)ち、違

妻、再び鬼の位置で唱和する。

妻ぶかのおんなとほてる

夫、首を振りながら走る。

タカシ速い。

妻、振り返る、夫ギリギリタッチできず。

タカシ惜しい、、、

妻、唱和。

妻さわらないでけだもの

夫、タカシに振り返り泣きそうになりながらタッチする。

タカシがんばった！
妻さわらないでって言ったでしょ
夫なんだよ、それ！だるまさんがころんだじゃないじゃないか！
妻 …
夫なんだよ…、せめて何が言えよ…

と、妻、無言で夫を睨みながら、タカシと同じく動く側へと移動して位置に着く。

タカシやるんですね。やりましょう！ね？
夫やるのか、、、。だるまさんがころんだって、どうすれば勝ちだったっけ？
タカシ鬼にタッチしたら勝ちということで
夫じゃあ、今は、俺の勝ちか！
妻 (ムッとして)次、私がタッチしたら、私の勝ちね。それで終わりにしましょう？
夫おわり！？
タカシおわり？
妻ええ、次で終わり
夫タカシ、、、
タカシが、がんばります！

夫、唱和する。

夫へそくりでけいばした

今度は妻が固まる。

妻: (動けないまま)へそくり？家のローンあるのに、まだ隠してたの？
夫: (固まったまま)す、少し…
タカシ: (慌てて)はいはい! 喋らない!

夫、唱和。

夫: どうそうかいでうわき

妻が静止する。

夫お前だって、人のこと言えないだろう？
タカシマジスカ？奥さんマジスカ？

妻、否定も肯定もしないで静止。

夫あいてはじむとれーなー

妻、がっくりと膝を折る。

タカシあぁ…
妻: …見てたんだ？

夫、振り返り。

夫タカシくん、効果は抜群だ！次こそ、俺をタッチして君が勝ってくれ！
タカシここに勝利はあるのでしょうか？

夫 (唱和)うわきはおたがいさま

妻がタッチする。

夫えぇ？なんで！？
妻同窓会で浮気？相手がジムトレーナー？
夫って、聞いたけど
妻誰に？
夫母ちゃんに
妻はぁ…

と、妻、鬼をやる気満々で唱和する。

妻しゅうとめのいいなりか

夫、ピタリと止まる。

夫: 「だーるーまーさーんーがー…」

妻: (動きながら)「でぃーぶいのうたがい」

夫: 「ころんだ!」

妻、止まる。夫、凍りつく。

夫: (小声で)なんで知ってるの…

妻: バレてないとでも思った?「そとでおんなつくった」

夫: (固まったまま)ち、違うんだ…

妻: (一歩近づいて)「おなじはかはいらない」

タカシ: (慌てて)ちょ、ちょっと休憩しません!?

夫: (鬼のまま続ける)待って。続けさせて。

タカシ: え…

夫: 「だーるーまーさーんーがー…」

妻: (動きながら)「さわるなこのけだもの」

夫: (振り向かずに)「ころんだ…」

妻、ゆっくり近づく。

夫: (目を閉じて)「だーるーまーさーんーがー…」

妻: 「ゆるしてくれごめんよ」

夫: 「ころんだ…」(振り向く)

妻、すぐ目の前に立っている。

妻: …私のセリフ取らないで。

夫: (涙ぐんで)「いいえゆるさないわよ」…だろ?

妻: (黙って見つめる)

タカシ: (遠くで見守る)

夫: 「このとおりだあやまる」…(その場で土下座)

妻: …立ちなさいよ。恥ずかしい。

夫: (土下座のまま)「だきしめてよぎゅっと」

妻: (ため息)「こうかいこうなのかい」

夫: (顔を上げて)違う。本当に反省してる。「もっとつよくよもっと」…お前への気持ち、見失ってた。---第六場「和解の兆し」

妻: (目を逸らして)「おまえだけだおれには」

夫: (立ち上がって)「うそよいつもくちだけ」…だよな。

妻: (小さく)…でも。

夫: え?

妻: 「おまえしかいないんだ」…私にも。バカ。

タカシ: (遠くで涙ぐむ)

夫: じゃあ…やり直せる?

妻: (考えて)条件がある。「かいがいにいきたいわ」

夫: (驚いて)マジで?

妻: 二人で。ちゃんと。

夫: (頷いて)わかった。約束する。

妻: あと。「こどもがほしいふたり」

夫: …え?

妻: 「つくろうよいますぐに」

夫: (真っ赤になって)お、おお!

妻: (照れて)「だめよひとがみている」

二人、タカシの存在を思い出す。

タカシ: (手を振って)いますよー!---第七場「第三者の気遣い」

夫: (タカシに駆け寄って)タカシ!ありがとな!

タカシ: (照れて)いやいや、俺何もしてないし…

妻: (近づいて)助かったわ。ありがとう。

タカシ: (慌てて)お、お幸せに!

夫: (妻の手を取って)これから色々話し合おう。

妻: …ええ。

夫: (イチャイチャし始める)

タカシ: 「かえってくれないかい」

夫: え?

タカシ: (キッパリ)「いちゃいちゃすんなよ」

妻: (笑って)ごめんなさい。

タカシ: (立ち上がって)「おじゃまいたしました」

夫婦: (揃って)「おかまいできませんで」

タカシ、去っていく。

タカシ: (振り返って)でも、よかった。(独り言)…俺も誰か見つけようかな…---終幕

夫婦、手を繋いで公園のベンチに座る。

夫: なあ。

妻: 何?

夫: だるまさんって、ころんでも起き上がるんだよな。

妻: …そうね。

夫: 俺たちも、また起き上がれるかな。

妻: (小さく笑って)バカね。もう起き上がってるじゃない。

二人、静かに寄り添う。

遠くでタカシが一人で「だるまさんがころんだ」をやっている姿が見える。

タカシ: (独り言)だーるーまーさーんーがー…「どくしんのままおいてけぼり」…ころんだ。

（了）

コントワークショップのお知らせ

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このコントの創作のメモ

場面設定：だるまさんがころんだの途中で鬼が記憶喪失になっている
人物：夫婦・友人

起承転結

起
友人が妻に招かれて、夫婦の家にいる。友人が夫が動かないことを確認。妻はどうして動かないのかわからない。友人が手を振ったり、話しかけても夫は無表情で微動だにしない。妻が席を外すと夫が動き出す。夫は、妻と「だるまさんがころんだ（略称：だるころ）」をしていたのだが、妻が突然「だるころ」をしていることを忘れてしまい、夫はそれから妻がいる時には動けなくなっているという。なぞ現象に友人は冗談かと思ったが、妻が戻ってくると夫は、全く動かなくなってしまう。
承
再び妻が席を外す。夫に今までどうして過ごしたのか聞くと、「妻が見ていない隙にトイレにいったり、食事をしたり、と」語る。友人は「奥さんが見ていない時にタッチすればいいのでは？」と提案。夫は「それではダメ」だったという。解決するには「だるころ」を唱えてもらっている間にタッチしなければならないと仮説。では、友人を介して妻に「だるころ」を唱えさせようとする。
転
妻は友人から説明を受けて「だるころ」を行おうとするそぶりを見せる。が、口に出せず思い出す。自分は関西の人なので「ぼうさんがへをこいた」だった。なんだそんなこと、と笑っている友人だが、妻は真剣な顔をしている。「ぼうさんがへをこいた」と唱え、夫は動き出すが、タッチをしても変わらなかった。「だるころ」でなければダメなのか？　やはり「だるころ」と言って、と頼むが、妻は拒否する。「だるころ」を言っている間に、逃げるかもしれないから、と。
結
だるまさんがころんだのは、「ルールを破った者が罰を受ける遊び」だったからだ。そして、夫は「自分が何か悪いことをしたと思い込んでいる人間」であり、妻は「そのことに気づかないまま、無意識に夫を裁いていた人間」だった。夫は、浮気未遂のLINEを消し忘れたことを「バレたかもしれない」と思い込み、妻の視線を「鬼の目」として受け止めていた。妻は、夫の態度に違和感を覚えつつも、疲れとストレスで「だるころをしていたこと」自体を忘れていた。その謎が解けたとき、友人はふと自分のことを語り出す。「…実は僕も、まだ遊びが終わってないんです。小4の時に始めたドロケイ、まだ“ドロボウ”のままで。捕まってないんですよ。25年経っても。」夫と妻が「それ、終わってないの!?」とツッコむ中、友人は遠くを見つめながら言う。「たまに思うんです。大人になっても、終わってない遊びってあるんじゃないかって。ルールも、鬼も、誰が決めたかもわからないまま、ずっと続いてるやつ。」夫婦は顔を見合わせ、そして笑う。「じゃあ、そろそろ終わらせようか。」「うん、ちゃんと“タッチ”して。」そして3人は、玄関の前で「だるまさんがころんだ」と「ぼうさんがへをこいた」を交互に唱えながら、静かにポーズを決める。最後に友人がぽつりとつぶやく。「…でも“ケイドロ”は、まだ終わってないからな…」