観劇後アンケートの難しいところ

観劇後アンケートの難しいところ

2018-12-11

要点

  • 書く動機と利益がないと、2時間近く座ったあとではその気力はないのでは。
  • アンケートの目的は、意思疎通ではないか。
  • 双方にメリットのあるアンケート方法はないものか。

書く側、書かれる側それぞれの事情

書く側の事情

2時間近くじっと座って観たあとは、ちょっと休憩したい。映画のように飲食ができるわけでもないし、トイレに行きたくもなる。さらに、目の前でパフォーマーの緊張感は客席側にも伝搬している。結果的に観劇って観客にもエネルギーを要求している。

また、観終わったすぐあとに、ある程度まとまった文章を簡潔に書くのって、慣れてても良い感想を書くのは難しい技術ではないかと思う。感じた部分をうまく抽出して文書化できないもどかしさもあるし。

書く側の私はというと

今のように好きな時間にリラックスして、ブログ(もしくはsnsのポスト)にまとめて書けば、書いた本人の手元にも残るし、文章を書く楽しみにもなるので、感想があればひっそりとメモを残したりする。なので、私は劇場で書けない派になりました。

書かれる側の事情

観劇後アンケートを公演終わりにみんなで読んで一喜一憂することは、打ち上げの楽しみのひとつだし、さらには今後の活動にも影響する(かもしれない)。なにより、稽古を通じて作り上げたものが、どこまで出来たか伝わったか、さらには自分のパートはどうだったか、アウトプットしたあとのフィードバックは、めちゃくちゃありがたい。

書いてくれる人は、その舞台への脊髄反射的なもの、その人の衝動に火をつけられる表現だったかも。「おもしろかった」「つまらなかった」の一言でも欲しいが、もうちょっと具体的にどうだったかまでできれば知りたい。

が、書いている人のその時の状況から察すると、もっと評価高いかもしれないし、もっと悪いかもしれない(悪い意見について、かなりエネルギーを使っている可能性あるので検討事項になるかもしれない…)。わざわざ悪い意見を紙に書くって、よっぽど期待してたか、時間とお金を損した気分になったか、いずれにせよ、ただ切って捨てるのはもったいないくらい、思いがあるような気もする。

アンケートの目的は?

書く側の目的

  • 反応を伝えたい(すごく良かった。応援したい。知り合いの誰々良かった。心が暖かくなった。考えさせられた。何がしかの意見、受け取ったものを伝えたい)。
  • クレームを伝えたい(椅子が硬い、受付の対応が悪い、長い、聞こえない、退屈、作品の理解が浅い、道徳に反する内容だ)。
  • 連絡先を書いておくので、次の公演も教えて欲しい。
  • 誰にも知られずこっそり思いを伝えたい(紙の場合)。

書かれる側の目的

  • 反応が知りたい(褒められたい。表現が伝わったか、楽しんでもらえたかを確認したい)。
  • 今後も続けていけるように、意見を参考にしたい。悪いところがあれば改善したい。
  • 今後の連絡先(ダイレクトメッセージ、ファン化、顧客リスト)。

共通しているのは、表現者と観客の意思疎通

映画やテレビを観たあとって、一緒に観た誰かがいれば、ざっくばらんに話をするけど、制作者に直接意見を伝える場面って(ネット以外では)少ないと思う。演劇慣れしていないと、さっきまで舞台にいた人たちに対して、何か声をかけるのも戸惑うだろうし。慣れてくると声がけもするんだろうけど、アンケートを書くかどうかって、その声がけができる人かどうかで結構違うかもしれないな。

演劇は社会性の芸術、コミュニケーションの芸術って、誰かが言ってた。観劇だけして、ひっそり帰るのではなく、観たあとに表現者と客が何かしらのコミュニケーションを取ることが重視されているのではないか、と、書き続けて思ったこと。

「客出し」という手段もある

上演が終わったあとに、その座組一同がお客さんをお見送りする手段があるのだけど、客出しをしない劇団で演劇を始めたので、割とサッと帰るのが当たり前の感覚だったが、今はもうみんな、よっぽどのタレントや商業演劇でない限り「客出し」やってるんだよね。そこで知り合いや知り合いでないお客さんと会話をすることができるので、アンケートを取らなくても、ある程度の反応はそこでわかるのかもしれない(その場でネガティブな本音はあまり言わないだろうけど)。

それでもなおアンケートが必要ならば

意思疎通が客出しでまかなえるとしたら、次にアンケートが必要な理由って、形に残る「参考意見」ってことになる。この参考意見の集約をアンケート用紙の形でまとめ、公演後(もしくは公演中)の改善につなげることは考えられる。よっぽど直したほうが良いクレームは、おそらく関係者通じて主催者の耳にすぐに入るであろうから、紙にフォーカスすると、何をどうするつもりで集めるのかってことだ。

  1. 改善するもの
  2. 今後検討するもの
  3. 流すもの

この3点のレベルがあるとする。この段階にいたるには集計をしなくてはならない、集計をするには、形あるもので残したほうが良いわけだから、口頭では把握しきれない情報が入っていないとならないわけだ。

この情報を得るためには「なんでもいいから書いてください」ではなくて、具体的な設問があったほうがよいのだけど、でもはじめに書いたように、観劇終わりでは疲れてるから、あまり具体的な設問だと面倒なので書かない可能性がある。

知りたい項目に絞ってチェック形式はどう?

だから、知りたい項目をチェック方式にするアンケートもある。いくつかの項目について回答をチェックする程度で負担を軽くしておき、その他のご意見があれば、と備考エリアを設ける。ここまでやると少しは役に立つ情報が集まるかもしれない。一方、設問内容を考えるなど、アンケート用紙作成に時間を取られてしまうので、余裕がない団体では結果に対しての労力対効果の検討が必要だ(ちいさな団体だと、稽古や宣伝活動や作り物で忙しくあまり現実的ではないのだろう)。

チェック形式でも辛いパターンのやつ

さらに設問が多すぎるアンケート用紙もつらいものがある。A4サイズにビッシリとチェックマークが並んだアンケート用紙を見た時は、観劇前にあらかたのチェックをつけてしまっている。見る前のほうが元気だから。だから正直そのアンケートは当てにならないと思われる。

インセンティブ方式

アンケートを書くとご褒美がもらえるパターンもある。次回公演割引、飴ちゃんやうまい棒がもらえる、劇団オリジナルグッズがもらえる、メールでアンケートを送ると、抽選で100名になにがしかをプレゼント。など、おそらく普段そういう仕事をしてる人がいるんだろうなって推測される団体もいる。この場合、書く方も少しやる気が出て書くのだけど、景品目当てなので、本音が隠される可能性が高い。

アンケートが目的じゃないんだよね

いろいろ書いてみたけれど、アンケートを書いてもらうことを目的とするのではなく、その先のコミュニケーションを目的とするのがよさそうだ。紙、SNS、口頭、あらゆる方向でご意見ご感想を募る、それがシンプルで、得たい結果に近づけるような気がする。心を動かす公演を真摯に作る団体には、自然と観客がなにかを伝えたいって思うだろうし。そうなりたいものだ。