猫を飼っている。名前は夜。 真っ黒な身体に黄色い目をした雑種。 こいつが家に来たのは夏だった。
古い扇風機特有の緩んだファンの軸が鳴らす音と、蚊取り線香の香りが気持ち良かった。 網戸だけ残して窓を開放し、薄い布団にだらしなく横になって庭を眺めていた。 すると黒い猫が庭を横切ろうとしているのが目に入った。
こいつか。度々来て庭でウンコしていく動物は。
黒い猫は僕が見つめているとは知らず、庭をウロウロしていた。 僕はこの黒い猫がまたウンコしそうになった瞬間を狙って、音を出そうと構えていた。 ここでウンコしたら、何か嫌な事があると覚えさせるのだ。 しかし黒い猫はなかなかしなかった。 じっとしていると、だんだん眠くなってきた。
そして気がつくとすでに太陽が降りていて、庭が暗くなっていた。昼寝には長過ぎた。 ウンコを確認するために庭に降りたがわからなかった。 見上げると黒い空にキレイな三日月が出ていた。
黒い猫が夜に変身したような錯覚を覚えた。
そして僕は、黒い猫を夜と名付けた。 夜は毎日来る。今も外で夜が眠っている。
ウンコもたまにする。