登場人物2名、上演想定約7分(約2677文字)
舞台中央にテーブル1台、椅子が下手側に2脚、上手側に1脚。
上手側に店員がいる。
下手から客が「ウィーン」と入ってくる。
店員「いらっしゃいませ」
客「人を1人派遣して欲しいのですが」
店員「そうですか。では、こちらにお座りください」
客、席に座る。
店員が書類を取り出してヒアリングする。
店員「今回はどういったご要望ですか?」
客「えぇ、今日、合コンがあるんです、2対2の」
店員「はいはい、合コン(とメモ)」
客「なのですがツレの男が1人ドタキャンしちゃって、それで、人数合わせに男性を1人派遣して欲しいんです」
店員「なるほどなるほど、そういうことですか」
客「2、3時間ほどでいいんです。今日なので、急いでるんです。難しいですか?」
店員「(にっこりと)大丈夫ですよ。派遣する男性ですが、生きてるのと、死んでるのと、どちらがいいですか?」
客「(間)生きてるのと、死んでるの・・・違いは?」
店員「生きてるのは動きますし話せます。死んでるのは動きませんし話せません」
客「真逆なんですね。それぞれいくらですか?」
店員「はい、生きてるのが1万5000円で、死んでるのが1500円です」
客「時間単価ですか?」
店員「1日の価格です。どちらがよろしいですか?」
客「じゃあ・・・死んでるほうでお願いします」
店員「承知しました。それで、死んでる男性は、どのようなのがよろしいですか?」
客「どのような?」
店員「たとえば、優しそうだとか、シュッとしてるとか、社交性がありそうだとか」
客「死んでるのに社交性が?」
店員「たとえばです。合コンですからね」
客「あぁ。その・・・、お恥ずかしながら、僕が引き立つように、年上とかちょっと不細工とかですかね・・・」
店員「(うんうんとうなずきながら)では、お持ちしますね」
と、店員が店の奥にひっこみ、奥から死んでる男を持ってくる。
店員が客の隣に死んでる男を座らせる。
店員「派遣する前に、傷のチェックをお願いしています」
客「傷を? レンタカーみたいですね」
店員「そうですね。返却時のトラブル防止に。多いんですよ、乱暴に扱って傷をつけたまま返却されるお客様が。破損の責任所在をはっきりするために、チェックしていただいています」
客「はぁ。(死んでる男を検品しながら)この傷は?」
店員「(資料見ながら)はい、生きてる時に刺された時の傷になります」
客「じゃあこの傷は元々あったということですね」
店員「はい。こちらでよろしいですか?」
客「(じっくり考えて)はい、お願いします」
店員「このままお持ち帰りされますか?」
客「うーん・・・持っていけるかな・・・。配送ってやってます?」
店員「やっております、プラス1500円になりますが、よろしいですか?」
客「(じっくり考えて)はい、お願いします」
店員「それでは手配をしますので(と、書類の準備を始める)」
客、待っている間に携帯電話が鳴り、通話を始める。
客「やぁ、こんにちは、今夜楽しみだね。・・・どうしたの? ・・・え、キャンセル? 2人とも?・・・。わかった、しょうがないよね。いいよいいよ! うん。またね、それじゃ・・・(と、携帯を切る)」
店員「こちらの書類に記入をお願いします・・・どうされました?」
客「えぇ、合コン相手の女の子2人がドタキャンになりまして・・・」
店員「あぁ、そうでしたか」
客「えぇ」
店員「どうされます? この死んでるのもキャンセルされますか?」
客「それで、追加で死んでる女性を2人派遣してもらいたいんですが」
店員「はぁ、そうですか。うちは構わないんですが、そうなると、その合コン、死んでるのが3人で、生きてるのはお客様だけになりますが?」
客「えぇ、合コンがしたいので」
店員「あの、死んでる女性だとお高くなりまして、2人で4000円になりますが、よろしいですか?」
客「全部でいくらになります?」
店員「(電卓をたたきながら)えぇとですね、死んでる男性が1500円、配送が1500円、死んでる女性が2人で4000円ですので、合計7000円になります。よろしいですか?」
客「配送料は変わらない?」
店員「都内近郊でしたら一律でやらせてもらっています。よろしいですか?」
客「(じっくり考えて)はい、お願いします」
店員「では、こちらの書類に記入をお願いします」
と、客の携帯に電話が鳴る。
客「失礼。(と、電話に出る)今日は予定があるって言ったじゃない。・・・え? 親父が危篤? ・・・なんとかもたない? 無理そう? ・・・そう、わかった。すぐ行く」
店員「あの、なにか?」
客「うちの親父が生きてるのと死んでるのの境目にいるらしくて、残念ながら、僕も合コンをドタキャンすることになりました」
店員「あらぁ・・・。では、全てキャンセルで?」
客「・・・あの、死んでる男性、もう1人追加できますか?」
店員「・・・えーと? どういうことですか?」
客「僕の代わりに人数合わせで」
店員「つまり、死んでる男性2人、死んでる女性2人を派遣ということで?」
客「はい」
店員「そうすると、お客様不在で、死んでる人だけの合コンになっちゃいますね」
客「ええ。配送料は変わりますか?」
店員「いえ。配送料は変わりません」
客「よかった。急いでいるので、もう決めます。全部でいくらですか?」
店員「(電卓をたたきながら)えぇとですね、死んでる男性が2人で3000円、死んでる女性が2人で4000円、配送は据え置きで1500円で、合計8500円になります。よろしいですか?」
客「(すぐに)はい、お願いします」
店員「承知しました、では・・・あっ!」
客「なんですか?」
店員「お客様、死んでる人4人の派遣ですので、パック割引がご利用いただけます」
客「結局いくらですか?」
店員「(電卓をたたきながら)えぇとですね、死んでる男性が2人で3000円、死んでる女性が2人で4000円、配送は据え置きで1500円で、割引前の合計は8500円になります。そこからパック割引500円が引かれまして、割引後合計で8000円となります。よろしいですか?」
客「(前のめりに)はい、お願いします」
店員「では、こちらに(サインを)」
と、店員が書類をだすやいなや、乱雑にサインをして、お金を払う客。
客「じゃ、そういうことで、よろしくおねがいします(と急いで出ようとする)」
店員「あ、お客様!」
客「なんです?」
店員「不要になった死んでる人の買取も行っていますので、よろしければ」
客「買い取り?」
店員「ええ、1人8000円で。よろしければ」
客「(店員を強く長く見つめて)すぐに持ってきます」
店員「お待ちしております」
(了)
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