登場人物3名、上演想定約5分(約1978文字)
- 山田:オンライン会議に参加したいが、二重認証で引っかかった人
- 二重:二重認証をするために雇われた人
- 三重:二重認証が微妙なときに雇われた人
オフィスで居眠りをしている山田。はっと起きて、時計を見る。
山田「やべ! このあとオンライン会議だ!」
急いでパソコンの操作をするが、二重認証の画面が出る。
山田「あーー、めんどくせぇな、二重認証! パスワードいれても、またさらになんか確認してくるーーーー!!」
そこに二重が現れる。
二重「はい、二重認証の人、誰ー?」
山田「・・・はい!」
二重「お名前は?」
山田「山田です」
二重「下の名前は?」
山田「太郎です」
二重「山田太郎さん、はい、確認できました」
山田「やった! いそげー!」
二重「ちょっと待って。確認できたのは名前だけ。あなたが本当に山田太郎さんなのかの確認が必要よ」
山田「えー、確認できたんでしょ?」
二重「あら、あなた、お顔がちょっと……」
山田「……太ったってこと?」
二重「はい」
山田「はいって言うなよ!」
二重「ごめんなさいね、一致しないとやっぱり認証できなくて」
山田「いや、顔なんて変わるでしょう、昔の写真で登録してたら!」
二重「そうね。髪型も変わるし、眼鏡をかけたり、外したり」
山田「そうそう」
二重「整形したり」
山田「してないよ!」
二重「そこまでは聞いてないわよ」
山田「聞かれたから答えてんだろ!」
二重「困ったわね……」
山田「えーーーー??? どうすりゃいいのよ、ログインできないと仕事になんないよ」
二重、気の毒そうに山田を見て、
二重「……しょうがないわね。三重認証、呼んであげる」
山田「三重認証!? あるの、そんなの! お願いします!」
二重、スマホを取り出して電話をかける。
二重「もしもーし? あ、私、私! 久しぶりー! 今ね、仕事中なんだけど、ちょっと面倒な案件でさぁ、来てくれない? ……うん、うん、ええー、マジで? あはは! ウケる!」
山田「(小声で)飲み友達かよ」
二重「えー、じゃあ、あとでねー!」
電話を切る。
二重「三重、すぐ来るって」
山田「お願いしますよ、ほんと急いでるんで……」
二重、その場に腰を下ろす。
山田「二重さんはもう行っていいんですよ?」
二重「え、私? ここにいるけど?」
山田「え、ずっといんの?」
二重「だって、三重認証は二重認証の上位サービスだから。私も立ち会わないと」
山田「上位サービス?」
二重「追加料金は発生しないから、安心して」
山田「そういう問題じゃない! 早くログインして安心したいの!」
三重が登場。
三重「お待たせー」
二重「おー、来た来た!」
二重と三重、ヒップホップ風の挨拶を始める。拳を合わせようとしてタイミングがズレる。片方が肩をぶつけにいくと、もう片方は手を差し出している。二人とも「……ん?」と首をかしげて、なんとなく終わる。
山田「できないならやるな」
三重、山田に向き直る。
三重「では、三重認証を始めます」
山田「お願いします!」
三重「まず、あなたの名前を教えてください」
山田「山田太郎です」
三重「はい、では、目を閉じてください」
山田「目を?」
三重「はい」
山田、目を閉じる。
三重「山田さん、昨日の夕飯は何を食べましたか?」
山田「カレーですけど」
三重「……カレー」
山田「それが何?」
三重「カレーを食べる人に悪い人はいません」
山田「どういう認証基準だよ!」
三重「ただし、甘口か辛口かによります」
山田「は? え、じゃあ辛口です」
三重「……では、オーラを見ます」
山田「聞いてる? カレーはなんだったのっ!? え? オーラ? 認証にオーラ使うの?」
二重「三重だからね」
山田「三重だからねじゃないよ! 便利に使うな!」
三重、山田をじーっと見つめる。
山田「え? 長くない? どうですか?」
三重「……ちょっと、オーラが見えにくいですね」
山田「俺のせい?」
三重「もう少し、本人らしくしてもらえますか?」
山田「本人だよ!」
二重「もう少し山田さんらしく」
山田「どうすりゃいいんだよ!」
三重「……山田さんですね」
二重「山田さんね」
三重「間違いない」
山田「何を見て判断したんだよ!」
三重「雰囲気」
山田「雰囲気!?」
二重「私にはちょっと違って見えるけど」
山田「え?」
三重「いや、山田さんよ」
二重「そう? じゃあ、山田さんね」
山田「お前ら、そんな感じで決めていいのかよ!」
二重と三重、うなずき合う。
二重「はい、認証完了!」
三重「お疲れ様でした」
山田「いや、ちょっと待って! 確認できてないでしょ!」
二重「何をおっしゃるの。二人で確認したじゃない」
山田「何を!?」
三重「山田さんであるという雰囲気を」
山田「雰囲気でログインできるのかよ!」
二重「それでは、ログインどうぞ」
山田、パソコンを操作する。
山田「あ、入れた!」
ガッツポーズ。
山田「やっと入れた!……あ、メール来てる」
山田、メールを開く。
山田「あ…今日、会議キャンセルだって」
沈黙。二重と三重、顔を見合わせ、無言で立ち上がる。
二人、ヒップホップ風の挨拶をもう一度やろうとする。
またしてもタイミングが合わない。
山田「できないならやるな!」
(了)
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