ショートショートストーリー 孤独がり屋

週末の人で賑わう駅前デパートで大好きなアイドル歌手のライブ会場にいた。ファン仲間と握手の列に並びながら、一刻も早くこの場から離れたという思いが頭から消えない。アイドルに会うのも、仲間とのオタトークもどれも好きなのだが、一人になりたがっている。

そのため、係の人に孤独エリアを案内してもらった。そのエリアは黄と黒のポールを柵にして、アイマスクをした人が数人いた。係の人は、わたしにアイマスクを手渡すと、また握手の列へと向かった。

アイマスクをつけると視界がゼロになる。しかし耳が鋭くなる。これでは孤独が満たされない。耳を抑えて可能な限り音も遮断した。孤独はまだ満たされない。

思い切って、となりにいる気配がする人に声をかけ、無視してもらえるようにお願いをした。人の良さそうな雰囲気がするその人は、快く私を無視してくれた。「チッ」と別の方角から舌打ちも聞こえた。ありがたい。ここの人たちは孤独のマナーがとても良い。

すっかり孤独を満喫してアイマスクを取ると、すでに周りの人も、握手の列もなくなっていた。お見事。ここのサービスレベルは質が高い。この感動をさっそくネットでシェアしながら帰宅した。

就寝前に投稿を確認すると、反応もゼロ。ここまで徹底して孤独を演出できるとは神サービスか。興奮気味にベッドに横になり、目をつぶって、こう思いはせた。神様、もしやあなたがこのサービスを?

神様からの返答はなかった。やはり神などいない。

極上の孤独だ。