観劇感想 北口改札「残心」第19回かながわ演劇博覧会 2022年3月12日12時

観劇感想 北口改札「残心」第19回かながわ演劇博覧会 2022年3月12日12時

2022-03-15

基本情報(チラシより)

北口改札とは

役者 : 市原一平と音響 : 鷹取 こうへいがだいたい 10 年くら い前に立ち上げたユニット。市 原、鷹取、鈴果の 3 人組。

Twitter:https://twitter.com/kaisatsukita

出演者

市原一平(北口改札)
徳倉マドカ(アマヤドリ)

作・演出

仲尾玲二

あらすじ

大勢の警官、野次馬たちが固唾を飲んで見守る中、男は女を人質に立てこもっていた。男の要求は内閣総理大臣との直接対談。刻一刻とタイムリミットが迫る中、女は一人、男の説得を続ける。噛み合わない会話。男の真の目的を知ったとき女は...。

ネタバレ含む感想

役者2人で空間を支配し、観客を引き込む

舞台の上には、長テーブルと椅子二脚が置かれていた。音響も照明も極シンプル。役者の演技を堪能する演出。

立てこもり犯の男をアドレナリン出っ放しなんじゃないかと不安になる様子で演じた市原一平さん。赤い縄できつく拘束され、男に何か訴えようと試みる銀行員の女を演じた特倉マドカさんは、視線の強さが印象的。その強さの理由は…。

女は我慢をしている。何を我慢しているかというと、尿意。尿意を40分リアルタイムで我慢している。それがこの話に不穏滑稽さ混じった空気を漂わせる。

男の思想と、女の羞恥心の葛藤が繰り広げられる。ラスト、いよいよ、銀行員と犯人の物語は解放される。大きなサバイバルナイフによって、犯人は女の手を借りて死を迎える。しかし、致命傷にいたらず、男は力ある限り、何度も何度も自分を刺す。

終演後カーテンコールなし、唐突に終わり、客電が点き、舞台監督が劇場のドアを開けるまで、誰も拍手もできず、立ち上がることもできなかった。これも「残心」か。

エロスとタナトス

作演の仲尾玲二さんがツイートで語った「エロスとタナトスの饗宴!」

がしっくりくる。迫る死の影と、羞恥から醸される官能。あるいはおかしみ。観客だもの、笑いたければ笑えばいいのに、うっかり笑ってしまうと、第四の壁をやぶって男に見つかり、怒鳴られてしまう恐怖さえも感じさせる。固唾を飲んで見守るタイプの演劇を、集中力を持って見せ続けられる演技技術、あるいはもって生まれた声と身体がなければ、この味わいは出せなかっただろう。

かながわ演劇博覧会 初日1回目の幕開けを鮮やかに飾った。

次の舞台

市原一平さん
令和座 第2.5回公演 「UNDER GROUND PARTY」
東京公演 3月26日(土)〜3月27日(日) スタジオ空洞(池袋)
神奈川公演 4月23日(土)〜4月24日(日) STスポット(横浜)