観劇感想 ヨコハマヤタロウ theatre045syndicate 190203

観劇感想 ヨコハマヤタロウ theatre045syndicate 190203

2019-02-03
    劇場。映画館。
    横浜の市外局番。
    ①企業の独占形態の一。カルテルの発達したもので、競争関係にある企業が競争を緩和するために共同の中央機関を設け、生産割り当てや共同購入・販売などを行うようにした企業組合。
    ②有価証券の引き受け団体。国債などについて、引き受け額を分担するため結成される。
    ③売春・暴力などの、大がかりな犯罪組織。

ハマノヤタッベからヨコハマヤタロウにネーミングを変え、東京・下北沢に進出したシアター045シンジケートの公演。2018年1月に初演し、「掘り出し物」として鳴り物入りで正月気分の抜けた一月末からの開演である。

この時期というのは、年が明けて何か新しいことを初めたり、始めさせられたりと、気分や行動が変わっていくものものだ。そこにあたって昨年と同様の題目を持ってきてキャストスタッフ劇場を変えてみた趣向はいかがなのものか?それを確かめに節分の日に下北沢に赴いたわけである。

良かったところ

背骨となるのは、名古屋のミラーマン(※)佃典彦作の戯曲。荒唐無稽、しかし圧倒的に娯楽。この飛び方が、日頃の合理的に生きがちな私に癒しを与えてくれる。クールであることと、ホットであることの間にあり、日常という変わらない安定のための継続努力を求められる今の息苦しさからひとときの解放を感じる。

人を殺すことを良しとするのは、恐らくほとんどの文化にないことであり(と思いたい)、その点においては、ミステリー、サスペンス、死亡事故、戦争のニュースの情報を浴びて感性が麻痺しがちなのだが、この作品の中の人の死は、次代につなげるための「遺伝子伝達」に近いのではなかろうか。

今井勝法演じる、ヤタロウは、人を殺す際に人生で思い残すことはないかと問う、そして相手から思い残すことを受け取ると呆気なく殺すものの、その思い残したものを引き継ぐ。
なんて面倒くさい設定。

しかしそれが、この劇作のチャーミングなエッセンスとなって、殺人を行うヤタロウへの免罪符となっていく。

さて、これ、なんだろうと考える隙もなく、次々と漫画的に物語は進んでいく。このスピード感と免罪符をもって、劇場にはある種、異様な思想が蔓延する。それは、

「作り話だから」

である。

虚構と現実を比較して、今目の前に行われているパフォーマンスをリアルタイムに評価していくのは、ナンセンスである、つまりバカバカしい。だから、楽しむことに専念するのだ。
私たちは、考えるために来たのではない、楽しむために来たのだ。そう言い切れるくらい、本戯曲・公演は、エンタテイメントとして、昨今忘れかけていた楽しむ姿勢を思い起こさせる技巧に満ちた、職人芸であった。
※締め切りに間に合わせる作家の鏡。鏡転じてミラー、ミラーマン。

気になったところ

前回の配役との違い。
前回は初見の新鮮さと、刷り込み(プリンティング)が発生し、どうしても比べてしまうのだった。